研究実績の概要 |
本研究の主な目的は、筋層非浸潤膀胱癌において、重大な事象である膀胱内再発、および進展を正確に予測できるモデルを構築し、実臨床の場で役立てることである。私たちは、世界で初めて、単一施設(東京医科歯科大学)の後ろ向きコホートよび前向きコホートを用いて、膀胱頸部の腫瘍発生が筋層非浸潤膀胱癌の新規症例において、進展の独立した予測因子であることを報告した(FujiiY,etal.EurUrol1998,KobayashiSandFujiiY,etal.UrolOncol2013)。進展の予測モデルとして、T分類(pTa/1),Grade(1,2/3)および膀胱頸部腫瘍(なし/あり)の3因子からなる簡便なTMDUモデルを提唱した。 今回の研究にて、2000年以後の東京医科歯科大学の前向きコホートを用いて、PWP(Prentice,Williams,andPeterson)モデルによる縦断的解析で、膀胱頸部腫瘍は再発例を含む筋層非浸潤膀胱癌において再発および進展の両者について独立した予測因子であることを示した。また、東京医科歯科大学以外の11施設の新規の筋層非浸潤膀胱癌の後ろ向きコホートに基づき、膀胱頸部腫瘍が進展の独立した因子であることの外部検証を行った。1000例を超える多数の症例の解析においても、以前の東京医科歯科大学の単一施設の結果と同様の結果が得られ、TMDUモデルの進展の予測能が優れていることを示した。これらの解析結果に基づき、目標2.縦断的な統計解析により、膀胱頸部腫瘍を予測因子に組み込んだ再発および進展の予測モデルの作成を進めた。進展に関しては、再発例を含めても従来のTMDUモデルと同様のモデルが優れた予測能を示すという結果が得られた。さらに膀胱頸部の背側および腹側の何れかの腫瘍がより強い予測因子になるかの検討を行い、三角部側膀胱頸部が重要であることを示した。
|