研究課題/領域番号 |
26462406
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小中 弘之 金沢大学, 大学病院, 講師 (40334768)
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研究分担者 |
北川 育秀 金沢大学, 大学病院, 講師 (00452102)
角野 佳史 金沢大学, 大学病院, 助教 (10397218)
京 哲 島根大学, 医学部, 教授 (50272969)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 去勢抵抗性前立腺癌 / 再燃メカニズム / ユビキチン-プロテアソーム系 / NF-κB / 小胞体ストレス / UPR / シグナル伝達 / クロストーク |
研究実績の概要 |
去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対する新規治療法の確立には,再燃メカニズムの解明は必要不可欠である.本研究の目的は,ユビキチン-プロテアソーム系という新たな観点から前立腺癌の再燃メカニズムを解明すると共に,ユビキチン-プロテアソーム系を創薬標的としたCRPC に対する包括的治療戦略の構築を第一義とする.NF-κB は転写因子の一つで,その活性化が癌細胞の増殖促進,アポトーシス抑制,血管新生誘導,転移浸潤能を引き起こすが,NF-κB は ERストレスによっても活性化される.ERストレスが加わると,3つのセンサー膜貫通タンパク質:PERK,IRE1,ATF6が小胞体に蓄積した変性タンパク質やミスフォールドタンパク質を検出することによって,細胞は直ちに UPR(unfolded protein response) のシグナル伝達系という防御システムを活性化しストレスから回避する一方で, ER ストレスが過剰すぎる場合には,防御システムでは対処しきれずアポトーシスによる細胞死が誘導される.そこで,NF-κB のシグナル伝達経路とUPR のシグナル伝達経路がともにユビキチン-プロテアソーム系によって制御されていることを鑑み,CRPCにおける NF-κB とUPR のクロストークに関する基礎的及び臨床的意義についての検討において,平成26年度は,前立腺癌におけるERストレスの状態,UPR 活性化のステータス,発現ベクターの構築,NF-κB の活性化抑制による殺細胞効果とし,主としてin vitroでの実験を計画した.また,NF-κB とUPR 活性化における中心的な転写因子である XBP-1,p50-ATF6,ATF4 とのクロストークについて検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
アンドロゲン依存性前立腺癌株 LNCaP,アンドロゲン非依存性前立腺癌株 PC-3,DU145,正常前立腺上皮細胞 PrEC,正常前立腺間質細胞 PrSCを用いて,ER ストレス誘導効果を有する thapsigargin あるいは tunicamycin で処理後,MTT アッセイで増殖抑制効果を判定し,ウエスタンブロット,タンパク合成アッセイ,XBP1 スプライシング解析などを通して ER ストレス状態を確認し,転写因子:XBP-1,p50-ATF6,ATF4の発現,局在のプロファイルにつき,RT-PCR 法と Western-blot 法によって,mRNA とタンパク質レベルで検討した.しかし,癌化ヒト組織アレイ Human Neoplastic Tumor Tissue Microarray シリーズ(タカラバイオ社)の前立腺版を用いた,転写因子の発現,局在の検討は未施行である.また,CMVプロモーターによって XBP-1,p50-ATF6,ATF4 がドライブされる発現ベクター: pCMV-XBP-1, pCMV-p50-ATF6, pCMV-ATF4の構築がなかなかうまくいかず,次のステップに進んでいない.従って, UPR と NF-κBのクロストークの検討および,NF-κB の活性阻害による in vitro 殺細胞効果の検討は次年度以降となる.
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今後の研究の推進方策 |
まず,pCMV-XBP-1, pCMV-p50-ATF6, pCMV-ATF4の構築を完了させ,LNCaP,PC-3,DU145においてthapsigarginあるいはtunicamycinで処理後,ERストレスによって誘導されるUPR転写活性が,NF-κB転写活性を抑制するか否かをNF-κBプロモーター活性,Western-blot法,免疫染色を用いて調べる.次に,NF-κBプロモーター活性については,以前構築した pGL3-3xκB-Lucを用いてルシフェラーゼアッセイにて検討する.また,pCMV-XBP-1, pCMV-p50-ATF6, あるいは pCMV-ATF4 それぞれと pGL3-3xκB-Luc を前立腺癌細胞株に co-transfect してNF-κB プロモーター活性も評価する.また,いかにしてNF-κB活性を効率良く阻害するかを,1) ドミナントティブ,2) デコイ,3) siRNA, 4) プロテアソーム阻害薬を用いて,以前樹立したLNCaP-SF細胞(アンドロゲンフリーで培養可能)及び LNCaP-κB細胞(p65を強制発現)を用いて,in vitro における殺細胞効果を WST-assay にて比較検討する.さらに,殺細胞効果が認められた細胞にアポトーシスが起こっているかを,Tunel assay あるいは Anexin-V assay にて解析する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,計画していた研究の進捗に大幅な遅れがあったために,本年度に使用予定であった研究費に残高が生じてしまい,次年度以降の研究費として繰り越されることになった.特に,大部分の研究費を要すると予想された癌化ヒト組織アレイ Human Neoplastic Tumor Tissue Microarray シリーズ(タカラバイオ社)の前立腺版を用いた,転写因子の発現,局在の検討や,業者に作製を委託するsiRNA を用いたNF-κB の活性阻害による in vitro 殺細胞効果の検討が未施行であったことが,次年度使用額が生じた理由として大きいと考える.平成27年度以降は,今年度の反省を踏まえて,迅速な研究計画の遂行と研究費の効率的な運用を心がける次第である.
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次年度使用額の使用計画 |
前年度施行予定であった、癌化ヒト組織アレイ Human Neoplastic Tumor Tissue Microarray シリーズ(タカラバイオ社)の前立腺版を用いた,転写因子の発現,局在の検討や,業者に作製を委託するsiRNA を用いたNF-κB の活性阻害による in vitro 殺細胞効果の検討を行うことにしており、その研究費に充てる予定である。
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