研究課題/領域番号 |
26462407
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
大園 誠一郎 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00183228)
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研究分担者 |
古瀬 洋 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (00345828)
本山 大輔 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (00727787)
高岡 直央 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (30467229)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腎癌 / トリアシルグリセロール生合成系 / 脳型脂肪酸結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
腎癌組織とその周辺にある正常腎の解糖系からトリアシルグリセロール生合成系へ向かう経路上の酵素であるグリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼのmRNA発現をリアルタイムPCRで測定した。その結果腎癌組織でNAD依存性グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼの発現の低下が見られた。この低下は腎癌で蓄積の見られる脂肪酸がトリアシルグリセロール生合成系をフィードバック阻害している可能性が考えられる。 腎癌組織で発現の見られる一方腎癌細胞株で発現の見られない脳型脂肪酸結合蛋白質(FABP7)を腎癌細胞株TUHR14TKBに発現させると細胞増殖速度の低下が見られた。細胞周期を測定からG2/M期の進行が阻害されている可能性が示唆された。またFABP7発現細胞ではω6脂肪酸のドコサテトラエン酸の蓄積が高まり、ドコサテトラエン酸を培地中に加えると細胞増殖が阻害された。FABP7のG2/M進行阻害の解析やドコサテトラエン酸の細胞増殖阻害の解析より腎癌の進行を阻害させる機構の一端を明らかにできる可能性がある。 腎癌細胞株では腎癌で発現の見られるFABP7の発現を失う傾向がある。そこで培養条件によりFABP7が発現するかを検討したところ、幹細胞用の培地でTUHR14TKB株と腎癌細胞株OS-RC-2を培養するとFABP7発現を検出できる様になる事を見出した。腎癌の性質が保存される細胞培養条件の探索に役に立つ知見を得た可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の腎癌細胞株のFABP7発現解析は腎癌細胞株786-Oや胎児の腎由来のHEK293 細胞株で行ったが、これらの細胞株がTUHR14TKB株とは異なるFABP7発現の細胞増殖や細胞遊走能に与える影響が明らかになり、TIHR14TKB株の結果は全ての腎癌細胞に共通する性質ではなかった。しかしながらFABP7発現によるG2/M期の進行阻害の解析や腎癌細胞株のFABP7を発現する培養条件などの新しい知見を得る事が出来た。またFABP7発現株で蓄積の見られるω6脂肪酸のドコサテトラエン酸を培地に添加すると細胞増殖の阻害が見られた。 一方で腎癌でのトリアシルグリセロール生合成に関わる酵素の解析の進捗はグリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼの発現解析のみと遅れており、予定していた腎癌組織のトリアシルグリセロール生合成に関わる主な酵素の発現解析やそれらの酵素の機能解析の計画の達成が難しい状況である。
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今後の研究の推進方策 |
FABP7発現株でこれまで知られているG2/M期の進行阻害に関与する遺伝子の発現がどうなっているかを測定し、FABP7発現株のG2/M期の進行阻害の証拠を積み上げると共にその進行阻害機構のシグナル伝達経路の解析を進める。 また腎癌細胞株では腎癌組織で高頻度に検出されるFABP7の発現が検出されなくなる傾向が見られるが、少なくてもOS-RC-2 株とTUHR14TKB株では幹細胞培地で培養するとFABP7発現が検出できる様になる。そこで幹細胞培地と通常の牛血清培地で培養した場合に癌化能等にどの様な変化が見られるかの検討を進める。 腎癌組織のトリアシルグリセロール生合成に関わる酵素の解析を続けて進める予定である。出来る限りのトリアシルグリセロール生合成に関わる酵素の腎癌組織のmRNA発現をリアルタイムPCRで測定し、トリアシルグリセロール生合成が腎癌で阻害されており、それが腎癌で蓄積の見られる脂肪酸によるフィードバック阻害が起こっているのではないかの論拠の補強にしたい。
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