研究課題/領域番号 |
26462408
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
杉村 芳樹 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90179151)
|
研究分担者 |
神田 英輝 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (10397507)
佐々木 豪 三重大学, 医学部附属病院, 医員 (20644941) [辞退]
白石 泰三 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30162762)
石井 健一朗 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90397513)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 前立腺癌 / 癌間質線維芽細胞 / アンドロゲン受容体 / 前立腺特異抗原 / 前立腺癌間質標的療法 |
研究実績の概要 |
本年度は、我々が作製した独自の前立腺癌CAFsパネルを活用して、ヒト前立腺癌由来培養細胞株とのin vitro共培養実験系を構築した。CAFsパネルに含まれる線維芽細胞の性状は極めて不均一であり、リガンド非依存的なアンドロゲン受容体の活性化は癌細胞と共培養する線維芽細胞の性状に強く依存すると考えた。そこで、線維芽細胞としての性状が大きく異なる3例、pcPrF-M5, pcPrF-M6, pcPrF-M7をピックアップし、さらに比較対象として市販されている正常ヒト前立腺間質細胞PrSCを用いた。また、前立腺癌細胞が有するアンドロゲン感受性の差異と線維芽細胞との相互作用を比較検討する目的で、アンドロゲン感受性を有するヒト前立腺癌由来培養細胞株LNCaPを親株として作製したアンドロゲン低感受性の亜株F10, E9細胞、アンドロゲン不応性AIDL細胞を使用した。まず、LNCaP細胞は検討に供した全ての線維芽細胞との共培養で、リガンド非依存的なアンドロゲン受容体の活性化が確認された。一方、E9細胞はPrSCを除く、癌患者由来線維芽細胞との共培養で、リガンド非依存的なアンドロゲン受容体の活性化が確認された。しかし、F10細胞は何れの線維芽細胞との共培養でもリガンド非依存的なアンドロゲン受容体の活性化は認められなかった。AIDLについてはAR遺伝子に変異があるために何れの線維芽細胞との共培養でもリガンド非依存的にアンドロゲン受容体が活性化されることはなかった。特に興味深かった点は、アンドロゲン不応性AIDL細胞では癌患者由来線維芽細胞との共培養でARタンパク質の発現量が顕著に低下したことである。以上の結果より、癌患者由来線維芽細胞との共培養で癌細胞に生じる、リガンド非依存的なアンドロゲン受容体の活性化は癌細胞の性質にも依存している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き本年度も、本研究課題において中心的な実験材料となる、複数の前立腺癌患者の組織から初代培養して得られる線維芽細胞を独自のCAFsパネルとして収集した。線維芽細胞の初代培養は9例の前立腺癌患者から施行し、in vitro細胞培養系にて増殖し、実験に用いることが可能となった線維芽細胞は4検体、つまり初代培養の成功率は44.4%であった。2年間では16例/24例(66.7%)で線維芽細胞を得ることができ、順調に前立腺癌CAFsパネルを作製しつつある。 さらに本年度は、我々が作製した独自の前立腺癌CAFsパネルを活用して、ヒト前立腺癌由来培養細胞株とのin vitro共培養実験を施行し、リガンド非依存的にアンドロゲン受容体を活性化する線維芽細胞を見出すに至った。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も、本研究課題において中心的な実験材料となる、複数の前立腺癌患者の組織から初代培養して得られる線維芽細胞を独自のCAFsパネルとして収集する。 最終年度は、我々が作製した独自の前立腺癌CAFsパネルを活用して、ヒト前立腺癌由来培養細胞株とのin vivo腫瘍形成実験を施行し、去勢下でもリガンド非依存的に前立腺癌細胞のアンドロゲン受容体を活性化する線維芽細胞を探索する。
|