研究課題/領域番号 |
26462416
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
井手迫 俊彦 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10642613)
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研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345013)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 膀胱癌 / ナノミセル |
研究実績の概要 |
次世代シークエンサーを駆使して、シークエンスレベルにおける解析を行い、膀胱癌で発現変動するマイクロRNAの網羅的な解析を行った。この中から、発現が抑制されているマイクロRNAの上位50にフォーカスした。現在使用可能な既存薬の標的となっているシグナル伝達機構と、膀胱癌細胞における機能性RNA分子ネットワークの相互関係を研究・理解して、膀胱癌の新規個別化治療戦略を構築し、ナノミセルによるドラッグデリバリーシステムに応用するマイクロRNAの候補を見つけることが目標である。Deep sequencingによるmiRNA発現解析では、933個の既知miRNAと17個の新規miRNAの発現を解析し得た。933個の既知miRNAのうち、膀胱癌で有意に発現が低下していた60個のmiRNAの中から、クラスターmiRNAに着目し、その機能解析と標的遺伝子群の探索を行った。ヒト染色体9q22.32領域に存在するクラスターmiRNA (miR-23b/24/27b) について、膀胱癌における役割について検討した。膀胱癌臨床検体と正常腎組織においてreal time PCRを行い、miR-23b/24/27bの発現を測定した。miR-23b/24/27bとmiR-controlの発現導入膀胱癌細胞株(BOY・T24)を作成して、XTT・wound healing・cell invasion assayを行った。miR-23b/24/27bの発現は癌組織で有意に低下しており、両者の発現は正の相関を認めた。miR-23b/24/27b発現導入膀胱癌細胞株で遊走能、浸潤能の抑制効果を認めた。また、in-silico解析で導かれたc-MET, EGFR, FOXM1の発現はmiR-23b/27b発現導入により著名に抑制された。miR-23b/24/27bクラスターは、膀胱癌細胞においてc-MET, EGFRを標的とし癌抑制型miRNAとして機能している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Deep sequencingデータから核酸医薬候補となる癌抑制microRNAを見出し、論文化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
miRNA-mRNAの分子ネットワークから浸潤・転移に関わる標的分子を選択し、低分子核酸(miRNAまたはsiRNA)による抗腫瘍効果をまずin vitroで検討する方針である。さらにナノミセルによるドラッグデリバリーシステムの最適化実験を行い、確立する予定である。さらにこれまでの解析で得られたin vitroのデータから、低分子核酸や浸潤・転移にかかわる分子ネットワークを介した尿路上皮癌の浸潤・転移抑制効果をin vivoでの実験に発展させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験全体は順調に進んでいるが、当該実験の結果の検証作業に予想以上の時間がかかり、3ヶ月程度の遅れを生じているため、次年度への繰越が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、上半期までに繰り越した実験を終了できる予定であり、繰越金は物品費や旅費に充てられる。
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