研究課題/領域番号 |
26462416
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
井手迫 俊彦 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (10642613)
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研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | microRNA / 膀胱癌 |
研究実績の概要 |
現在使用可能な既存薬の標的となっているシグナル伝達機構と膀胱癌細胞における機能性RNA分子ネットワークの相互関係を研究・理解して、膀胱癌の新規個別化治療戦略を構築することが目標である。 Deep sequencingによるmicroRNA (miRNA) 発現解析では、933個の既知miRNAの中でクラスターを形成するmicroRNA-451a/144-3p/144-5pに着目した。miRNA-451a/144-3p/144-5pの発現は、正常膀胱組織に比べ膀胱癌組織・癌細胞株では有意に抑制されていた(p < 0.0001)。またmiRNA-451a/144-3p/144-5pを膀胱癌細胞に核酸導入すると、miRNA-451aでは癌細胞の増殖は抑制されなかったが、miRNA144-3p/144-5pでは癌細胞の増殖を抑制した。さらにmiRNA-144-5pは細胞周期においてG1-arestを誘導する事で癌細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。miRNA-144-5pの制御する分子ネットワークを探索した結果、細胞周期関連遺伝子(CCNE1・CCNE2・CDC25A・PKMYT1)が、このmiRNAの標的遺伝子候補となった。さらにルシフェラーゼレポーターアッセイにて、miRNA-144-5pがこれら細胞周期関連遺伝子(CCNE1・CCNE2・CDC25A・PKMYT1)を直接制御することを証明した。CCNE1、CCNE2、CDC25A、PKMYT1の発現は、正常組織に比べ膀胱癌臨床検体・癌細胞株で有意に亢進していた(p < 0.0001)。さらに臨床膀胱癌検体においてCCNE1、CCNE2の高発現群では全生存率の有意な低下を認めた(p = 0.0251、p = 0.0324)。 従来はmiRNAの生合成過程で従来はpassenger strandとして機能しないと考えられていたmiR-144-5pであるが、本研究により実は正常細胞で発現があり、癌細胞においては強力な癌抑制型miRNAとして機能することを見出した。このような癌抑制型miRNAを用いた膀胱癌転移モデルマウスにおける癌抑制型マイクロRNAの増殖/転移抑制機構の解明を次年度に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌抑制型miRNAの探索が進み、次段階のin vivo実験の準備ができている。また今年度の成果を論文化できた。
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今後の研究の推進方策 |
今回や過去の研究から有望な癌抑制型miRNAを選択してin vivo実験へ進む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験全体は順調に進んでいるが、当該実験の結果の検証作業に予想以上の時間がかかり、3ヶ月程度の遅れを生じているため、次年度への繰越が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、上半期までに繰り越した実験を終了できる予定であり、繰越金は物品費や旅費に充てられる。
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