研究課題
初めに、前立腺癌に対する抗アンドロゲン療法(ADT)が膀胱癌の再発を劇的に抑制することを世界で初めて報告(第102回日本泌尿器科学会総会、6th European Multidisciplinary Meeting on Urological Cancers)し、論文発表(Oncotarget. 5, 12665-74)を行った。前立腺癌20,328例から239例の膀胱癌合併を抽出し、条件を満たした162例においてnon-ADT群中例38例(50%)で再発をきたしたのに対し、ADT群86例中19例 (22%)であり、5年無再発生存率はそれぞれ40%と76%でADT群で有意に延長していた(p<0.001、HR=0.29)。このことは膀胱癌に対するADTの適応拡大、将来的な標準治療としての可能性を示唆する重要な意義を持つ。続いて、ARシグナルの関与をより明確にするため、ADTの再発抑制効果と膀胱癌におけるAR発現との関連について検討した。ADT施行群72例中、28例(38.9%)でAR陰性で44例(61.1%)でAR陽性であり、それぞれ、12例(43%)、10例(23%)で再発を認めたた。5年無再発生存率はAR陰性例で57%に対し、AR陽性例では73%で、有意にAR陽性例で良好であった(p=0.031)。既知の再発リスク因子を含めたCox比例ハザードモデルを用いた多変量解析においてもAR陰性は独立した再発リスク因子であった。以上の結果はADTがARシグナルを介して膀胱癌の再発を抑制している事を示している。以上の結果は、欧州泌尿器科学会、第103回日本泌尿器科学会総会、米国泌尿器科学会で発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初の後ろ向き研究の結果を症例数を増やして報告、論文発表した。AR発現とADTによる再発抑制との関連を検討、報告した。AR関連タンパク質との関連は現在進行中である。
膀胱癌におけるARシグナルのメカニズムの解明を目指す。そのために今までに報告されているARシグナル関連タンパクの発現を臨床検体で調べ、その再発との関係を調べることにより臨床的なターゲットとなりうる標的分子を探索する。その上で動物実験を用いた検証実験を予定する。
当初予定していたAR関連タンパク質の発現についての解析が行われておらず、それに伴う、抗体、試薬の購入分が次年度使用額となった。
次年度に予定通りAR関連タンパク質の発現解析を行う予定。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Oncotarget
巻: 5 ページ: 12665-74
http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2015/01/20150108_03.html