研究実績の概要 |
前立腺癌に対する抗アンドロゲン療法(ADT)が膀胱癌の再発を抑制することを世界で初めて報告(第102回日本泌尿器科学会総会、EMUC2014)し、論文発表(Oncotarget. 5, 12665-74)を行った。その内容は、前立腺癌20,328例のうち239例の膀胱癌合併症例を抽出し、条件を満たす162例についてnon-ADT群76例とADT群86例の5年無再発生存率はそれぞれ40%と76%であり、ADT群で有意に延長していた(p<0.001,HR=0.29)。続いて、ARシグナルの関与をより明確にするため、ADTの再発抑制効果と膀胱癌におけるAR、ERα、ERβとの関連について検討した。ADT施行群72例中、28例(38.9%)でAR陰性で44例(61.1%)でAR陽性であり、5年無再発生存率はそれぞれ57%、73%とAR陽性例で有意に延長していた(p=0.031,HR=0.27)。一方、ADT施行群における再発率はERα、ERβの発現との関連は認めなかった。このことは、ADTがARシグナルを介して膀胱癌の再発を抑制していることを示唆している。以上の結果は2015年の欧州泌尿器科学会、米国泌尿器科学会、第103回日本泌尿器科学会総会、EMUC2015で発表し、論文発表(Oncotarget. 12, 14153-60)を行った。現在、ADT群とnon-ADT群における膀胱癌のAR関連タンパクの発現,遺伝子発現を確認中であり、同時に多施設共同臨床試験を行うためのプロトコールを作成中である。
|