研究課題
【研究の目的】精巣がんは、好発年齢が20~30歳代と若年層であり社会的に影響の大きな疾患である。精子形成細胞を由来とする胚細胞腫瘍が多くを占め、様々な抗がん剤に抵抗性をもつ難治性症例も多い。精巣がんの発生機序は不明であり、様々な組織型があるため適切な培養細胞株がなく、基礎研究の進展を妨げている。私たちはこれまで、停留精巣における造精機能障害の病態解明のため研究を進めてきたが、その一因として精子幹細胞の分化異常を明らかにした。一方、複数のがんにおいて「がん幹細胞」の存在が注目されており、正常の幹細胞との違いが明らかになりつつある。そこで、これまでの研究成果をもとに、精巣のがん化に関わる幹細胞の形質変化を解明することを、本研究の目的とした。【本年度の研究実績の概要】精子幹細胞の形質変化に重要な役割を持つ、ヒストン修飾酵素Kdm5aの機能解析を進めるため、精原細胞株GC-1細胞にKdm5a強制発現ベクターを遺伝子導入したものとしていないサンプル間でマイクロアレイ解析を行った。Kdm5aを強制発現させた細胞では、精子形成細胞の分化に関わるScml2遺伝子が有意に発現亢進することを見出した。また、ChIP assay を行い、H3K4トリメチル状態ではKdm5a発現に伴いScml2遺伝子発言が上昇していることも明らかにすることができた。また、精巣組織から初代培養を行う系では、幼若精巣から精子幹細胞を分離・精製することができた。胎生期にアンドロゲン遮断を行った個体由来の細胞では、精子幹細胞の分化・未分化性維持に必要とされるc-Kit、Plzf遺伝子発現が有意に増加することを見出した。これらのことから、胎生期のアンドロゲンが精子幹細胞の形質変化に影響することが示唆された。
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Journal of Robotic Surgery
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