研究課題/領域番号 |
26462422
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
内木 拓 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50551272)
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研究分担者 |
河合 憲康 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20254279)
内木 綾 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20509236)
安藤 亮介 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30381867)
惠谷 俊紀 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 臨床研究医 (30600754)
飯田 啓太郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 臨床研究医 (30713945)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 去勢抵抗性前立腺癌 / 細胞間連絡機構 |
研究実績の概要 |
私たちは、ラットのプロバシン遺伝子プロモーターの下流に、SV40ラージT抗原の遺伝子を結合して得られるPBSVTジーンを、Sprague-Dawley (SD)系ラットの受精卵に導入し、前立腺癌のモデルラットを確立した。Transgenic rat for adenocarcinoma of the prostate (TRAP)と名付けられたこのモデルラットに発生する前立腺癌は、病理学的にもヒトの前立腺癌に類似した点を多く認めた。私たちは、このモデルラットを用いて、発がんメカニズムの解析や癌抑制物質などの研究を行ってきた。しかしTRAPから生じる前立腺癌は全て、去勢術などのホルモン療法で消失するため、ホルモン療法抵抗性前立腺癌の研究には不向きであった。 そこで私たちは、TRAPから得られた前立腺癌組織を、去勢したヌードマウス皮下に移植し、長期に継代することで、アンドロゲンの枯渇した状態でも、安定して増殖する腫瘍を得ることができ、さらにそこから細胞株を樹立できた。PCai1と名づけた、この前立腺癌細胞株は、ヌードマウスの前立腺への同所移植や、尾静脈投与を行うことで、安定的に骨転移を起こすことが分かり、新たな転移動物モデルを確立することに成功した。 近年、癌の増殖に不可欠な遺伝子をターゲットとした分子標的治療が臨床応用されつつあるが、前立腺癌では実用化されていない。そこで、私たちの樹立した前立腺癌モデルにおいて、ホルモン療法抵抗性に関与する因子を探索するため、抵抗性を獲得する前後でcDNAマイクロアレイ解析を行った。すると、ホルモン療法抵抗性の癌で発現低下を認め、これまで文献上報告のない、遺伝子Connexin43 (Cx43)を新たに同定することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
去勢抵抗性前立腺癌には抗がん剤治療が行われるが、薬剤が細胞内に効率よく分布せず、効果が乏しくなることが多い。Cx43によって構成されるGap junction (GJ)は、低分子物質を交通させることで隣接細胞とコミュニケーションを維持し生体の恒常性を保持するのに重要な役割を演じている。それゆえ、ホルモン療法前立腺癌でGJが担う細胞間輸送機構が回復すれば、薬剤が細胞内に分布しやすくなる可能性がある。今回私たちは動物モデルを用いた解析で、ホルモン療法抵抗性前立腺癌においてCx43の発現低下を認めることを世界で初めて免疫組織学的に証明した。そして、PCai1におけるCx43の発現をsiRNAで特異的に抑制すると、細胞増殖が低下する傾向を認めた。今後この増殖抑制効果を再現し、そのメカニズムの解明を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Cx43の抑制が細胞増殖や薬剤感受性に与える影響を検証する。さらに、Cx43の導入系を細胞株で樹立し、去勢抵抗性との関連を解析する。それらの結果を踏まえて、in vivoでの動物モデルを用いた検証を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroのトランスフェクションの実験が予想通りにはいかず、実験試薬代として予定していた金額が残ってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
in vitroのトランスフェクション効率が悪いため、試薬を変更して施行する予定である。
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