今年度は尿試料におけるDNAメチル化プロファイリング解析の結果から再度候補遺伝子を選出した。プロファイリングに含まれる尿試料は膀胱癌患者尿(T)、膀胱癌切除後患者尿(F)、健常者尿(N)であり、T vs. FN、T vs. N、T vs. F、F vs. Nの4群間の有意差検定から、すべての群間比較で有意差を認めた候補遺伝子(高メチル化 29遺伝子、低メチル化25遺伝子)を選出した。高メチル化29遺伝子はT vs. Nで、低メチル化25遺伝子ではF vs. N で有意差が顕著であった。これらの遺伝子群から4群間で極めて有意であったOSBPL5、ZIC4、PCDHA2 (高メチル化)および、CEACAM5、PTPRN2 (低メチル化)を最終候補遺伝子として選出した。検証研究はプロファイリングと異なる239例の尿試料 (T: 65、F: 134、N: 40)を用いた。T vs. NFの群間比較では各遺伝子における感度、特異度 (%)はOSBPL5 (86.78/ 80.51)、ZIC4 (91.38/ 75.0)、PCDHA2 (91.47/57.8)、CEACAM5 (81.59/55.46)、PTPRN2 (80.73/73.4)であった。これらの遺伝子に3個以上DNAメチル化異常を認めた症例を陽性とすると、感度87.59%、特異度78.96%の精度で尿試料から癌診断が可能であった。また、膀胱癌切除後患者尿は同一患者の経日的尿を含んであり、観察期間内に9例の再発を認めた。このうち6例では膀胱鏡と尿細胞診で再発無しと判定された尿試料から上記3個以上のDNAメチル化異常が検出可能であり、これらのDNAメチル化異常は予後予測マーカーとしても有用である可能性が示唆された。
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