研究実績の概要 |
microRNA は19-25塩基からなる低分子量RNAで、標的mRNAの3’非翻訳領域に結合し、mRNAの転写、翻訳の阻害や分解を行うことで、癌細胞の増殖抑制或いは促進する。Syndecan-1 はheparan sulfate proteoglycan の1つで、細胞の生存、遊走、血管新生など多彩な機能を有することが知られている。 本研究では、前立腺癌細胞株PC3を用いて、Syndecan-1の発現に連動するmicroRNAを検討したところ、microRNA-126, 149, 331-3p, 148a, 345, 30d, 23aがSyndecan-1の発現に連動して前立腺癌細胞に発現していることが明らかとなった。Syndecan-1あるいはそれぞれのmicroRNAを抑制し、細胞増殖能を検討したところ、syndecan-1の発現抑制により細胞増殖が抑制され、microRNA-126,149の抑制により同様の結果が得られた。免疫細胞化学染色ならびにSA-β-gal assayの結果、細胞増殖抑制の機序として、p21の発現上昇を介し、senescenceを誘導していることが示された。microRNA-126,149の標的候補分子を検討したところ、これらのmicroRNAがSOX2, NANOGおよびOCT4の発現を制御していることが明らかとなった。また、パラフィン包埋された前立腺癌組織よりRNAを抽出し、リアルタイムPCR定量法を用いて検討すると、これらのmicroRNAの発現が前立腺癌組織においてGleason分類による組織診断と発現が相関することが示された。 現在、Syndecan-1の発現に連動するmicroRNAについて、前立腺癌の進展に関わるような分子機序を明らかにすべく更に検討を進めている。
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