研究実績の概要 |
Hereditary Leiomyomatosis and Renal Cell Cancer(HLRCC)は筋腫(皮膚筋腫および子宮筋腫)と腎細胞癌とを主体とする常染色体優性遺伝疾患であり、2001年に北欧から初めて報告された疾患である。HLRCCの原因は、1番染色体の長腕(1q43)に存在するfumarase(FH)のmutationである。FHはミトコンドリア内でのKrebs(TCA)回路の一部を担っており、細胞のエネルギー産生に関与していることが報告されている。 平成26年度において、FH遺伝子のexon1-9のプライマーを作製しHLRCCの家系に属する1症例より採取した血液と手術により摘出された組織よりDNAを抽出し、ION PGM Systemを用いて、シークエンス及び解析を行うことにより血液と組織に共通する変異が検出された。平成27年度においては、Ion Ampliseq Designerを用いてFH遺伝子exon1-9のプライマーに加えSDHA、SDHB、SDHC、SDHD遺伝子、さらにNRF2遺伝子、KEAP1遺伝子、RET遺伝子、VHL遺伝子に対するプライマープールを作製し、腎癌症例12例、褐色細胞腫10例を対象として血液と組織よりDNAを抽出し、ION PGM Systemを用いてマルチプレックスPCRを行うことにより、HLRCCの家系に共通するFH、SDHA、SDHB、VHL遺伝子の変異が検出された。平成28年度は、10ng のRNAから20,000 種類以上の既知転写産物をマルチプレックス増幅可能とするIon Ampliseq TM Transcriptome Human Gene Expression Kitを用いて、腎癌症例8例由来の血液及び組織よりRNAを抽出し、ION PROTON Systemを用い遺伝子領域を増幅し発現解析を行った。
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