研究課題/領域番号 |
26462430
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
小島 聡子 帝京大学, 医学部, 准教授 (10345019)
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研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345013)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / マイクロRNA / 発現プロファイル / 去勢抵抗性前立腺癌 / 遺伝子解析 / ゲノム / 浸潤 |
研究実績の概要 |
機能性RNA分子であるマイクロRNAは、癌の進展・転移に深く関わることが知られているが、そのメカニズムの詳細は明らかでない。今回、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の進展のメカニズムを解析するために、マイクロRNAの発現プロファイルを明らかにし、その標的遺伝子の同定を試みた。 1、前立腺癌の治療の後再燃し、多発骨転移、リンパ節転移、肺転移、髄膜播種などを認めて死亡した3例の進行性前立腺癌患者の剖検標本を用いてRNAを各臓器より採取し、組織学的に検討し、また転移巣に発現するマイクロRNAのプロファイルを同定した。転移組織では、前立腺癌がびまん性に浸潤する像を認めた。免疫染色にて、PSA染色、アンドロゲンレセプター(AR)染色ともに陽性であった。 2、同定されたプロファイルには、これまで我々が報告してきたマイクロRNAと同様のものを多数含んでおり、進行性前立腺癌の再燃メカニズムは内分泌療法治療前とほぼ同様の傾向が伺われた。具体的にはmiR-143, miR-205, miR-23b/27b/24-1, miR-221/222, miR-133aなどのマイクロRNAの発現低下を認めた。発現低下を認めたマイクロRNAは、前立腺癌において、癌抑制遺伝子として機能することが予測された。 3、In silico analysisとして、Target scanのWeb siteを用いてmiR-221/222の標的遺伝子を同定した。標的遺伝子のなかで、最も発現が亢進している遺伝子はEcm29であり、miR-221/222の標的遺伝子の可能性が高いと考えられた。 4、今後はmiR-221/222の標的遺伝子の機能解析を行い、前立腺癌におけるmiR-221/22の役割について解析を進める方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時の研究計画に沿って研究を進めており、平成26年度、研究開始時の研究計画書において、初年度は去勢抵抗性前立腺癌患者の検体より組織を採取し、RNAを解析してマイクロRNAのプロファイルを明らかにすることを目標とした。今回、千葉大学機能ゲノム学の関先生および研究員生の協力の下、組織的検討、発現プロファイルの検討を行うことができた。組織学的には、前立腺癌はアンドロゲン反応性を有していることが示唆された。また、発現の低下する癌抑制遺伝子として働くマイクロRNAのプロファイルを作成したことで、これまで治療前の進行性前立腺癌のマイクロRNA発現を比較することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 今回の去勢抵抗性前立腺癌におけるマイクロRNAの発現プロファイルを同定したところ、miR-143, miR-205, miR-23b/27b/24-1, miR-221/222, miR-133aなどのマイクロRNAの発現低下を認めた。これらのマイクロRNAで、未だ機能解析を行っていないmiRについて、順次機能を明らかにする。 2.miR-221/222の標的遺伝子としてECM29が候補に挙げられている。その、機能解析を行う。前立腺癌細胞株を用いて、遺伝子導入 (gain of function)、遺伝子発現の抑制( loss of function) などを行い、発現を調整することで前立腺癌の増殖や浸潤能に変化が出るか、検討する。 3.今後はその他、前立腺癌の増殖、進展に対する治療として応用できるかどうか研究を進める方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、組織染色に用いるARV7の抗体を購入した。遺伝子の発現解析はデータベースを用いたin silico解析が多いため、今回は費用が多くはかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、細胞株を用いたin vitroの実験やin vivoの実験を進めるに当たり、必要経費がかかると考える。
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