研究課題/領域番号 |
26462434
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
佐藤 全伯 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 泌尿器科学, 講師 (00296675)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬 / HIVプロテアーゼ阻害薬 / プロテアソーム阻害薬 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬、HIVプロテアーゼ阻害薬およびプロテアソーム阻害薬を併用することで効率的に小胞体ストレスを誘導する方法を追究し、もって膀胱癌新規治療法を開発することを目的としている。 今年度は、昨年度に引き続き、プロテアソーム阻害薬ixazomibとHIVプロテアーゼ阻害薬ritonavirの併用メカニズムについて更に研究を進めた。結果として、過剰に蓄積されたユビキチン化蛋白が、RIPA bufferによる蛋白抽出時に非可溶性分画に移行することが新たに証明された。また、この移行は、オートファジーの誘導と一致していることも見出され、蛋白凝集がオートファジーと関連していることが示唆された。今年度は、更にixazomibとHDAC阻害薬panobinostatの併用効果についても研究を行った。併用は、相乗的にアポトーシスを誘導し、膀胱癌細胞増殖を抑制した。また、細胞周期関連蛋白であるcyclin D1, CDK4の発現を低下させると共に、p21の発現を増加させ、cyclin D1/CDK4複合体の発現と機能を同時に抑制することが示された。仮定通り、併用により小胞体ストレスが相乗的に誘導され、更にヒストンのアセチル化も促進された。また、蛋白合成阻害薬が併用による小胞体ストレス誘導を抑制し、殺細胞効果を減弱したことから、小胞体ストレス誘導が重要な作用メカニズムであることが示された。次いで、HIVプロテアーゼ阻害薬ritonavirとlopinavirの併用についても検討を行った。抗がん薬を用いない併用療法ではあるが、強力な殺細胞効果が認められた。また、仮定通り、小胞体ストレスの誘導が確認され、更にmTOR経路の抑制も示された。一方、併用がHDACの発現抑制とヒストンアセチル化も惹起することが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロテアソーム阻害薬ixazomibとHIVプロテアーゼ阻害薬ritonavirの併用実験の中で、過度なユビキチン化蛋白蓄積による蛋白凝集メカニズムについての新たな知見が得られた。また、ixazomibとHDAC阻害薬panobinostatの併用、およびHIVプロテアーゼ阻害薬ritonavirとlopinavirの併用が、小胞体ストレスを効率的に誘導することが見出された。仮定通り、HDAC阻害薬、HIVプロテアーゼ阻害薬、プロテアソーム阻害薬を併用することで小胞体ストレスを誘導することに成功しており、研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
プロテアソーム阻害薬ixazomibとHDAC阻害薬panobinostatの併用効果のメカニズムを更に探求する。また、これまで併用効果が明らかであった薬剤の組み合わせを用いて、in vivoにおける効果を検討する。また、他のHDAC阻害薬、HIVプロテアーゼ阻害薬、プロテアソーム阻害薬を用いて、更に効率的に小胞体ストレスを誘導するコンビネーションを追究していく。
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