研究実績の概要 |
本研究では、膀胱癌細胞において、臨床的に使用可能な薬剤の併用により効率的に小胞体ストレスを誘導する方法を探求している。 今年度は、主にプロテアソーム阻害薬oprozomibとHIVプロテアーゼ阻害薬ritonavirの併用効果について研究を行った。Ritonavirが分子シャペロンを抑制することで細胞内にunfolded proteinを増加させ、oprozomibがプロテアソーム阻害によりその分解を抑制することで、効率的に細胞内にunfolded proteinを蓄積し、小胞体ストレスを誘導、殺細胞効果を発揮すると仮定した。 膀胱癌細胞株UMUC3, T24, J82, 5637において、oprozomibとritonavirの併用は、相乗的にアポトーシスを誘導し、細胞増殖を抑制した。また、colony formationを有意に抑制した。併用は、細胞周期関連蛋白であるcyclin D1, cyclin-dependent kinase 4の発現を抑制し、sub-G1 fractionを増加した。予想通り、併用により相乗的に小胞体ストレスが誘導されたが、大変興味深いことにユビキチン化されたunfolded proteinは、その細胞内蓄積に伴って可溶性分画から非可溶性分画に移行することが、使用した全細胞株で初めて示された。更に、蛋白合成阻害薬cycloheximideがunfolded proteinの蓄積と小胞体ストレス誘導を抑制し、併用の効果を減弱したことから、仮定通り、小胞体ストレスの誘導が併用の重要なメカニズムであることが示された。また、併用がAMP-activated protein kinaseの発現を増加して、mTOR経路を抑制するとともに、autophagyを誘導すること、更に、HDACの発現を抑制してヒストンアセチル化を促進することも見出された。
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