研究課題/領域番号 |
26462447
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
櫛田 信博 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (30381396)
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研究分担者 |
柳田 知彦 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (20363765)
羽賀 宣博 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (50586617)
小島 祥敬 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60305539)
相川 健 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (80295419)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膀胱粘膜 / 過活動膀胱 / 自律収縮 |
研究実績の概要 |
【研究内容】膀胱壁の自律収縮はコンプライアンス調整等を行っているとされる。自律収縮の発生部位や薬剤特性の違い、過活動膀胱などの病的状態での自律収縮量の変化についての検討はほとんどない。我々は膀胱壁が持つ自律収縮の役割を検討し、過活動膀胱の発症メカニズムを解明したいと考えている。【方法】顕微鏡下にモルモット膀胱の粘膜層と排尿筋層を剥離し、粘膜切片と筋切片を作製した。トランスデューサへ懸架して5mNの荷重負荷下に自律収縮量をArea-Under-the-Curve(AUC)で測定した。また各種薬剤を添加し自律収縮量の変化率を算出した。平滑筋包有量をHE及びマッソン-トリクロム染色を行い計測した。【研究成果】(1)粘膜切片の平滑筋量は4.5%であった。(2)粘膜切片の持つ自律収縮量は4.5 mN*mm-2*secであり筋切片よりも有意に大きかった。(3)粘膜切片の薬剤反応の検討:30μMカプサイシンの灌流により、粘膜切片の自律収縮量は26.3%に減少し、1μM αβmATP(P2X1)により74.7%に低下した。P2Y作動薬では、30μM UDP(P2Y6)、30μM ADP(P2Y1)及び30μM UTP(P2Y2,4)では変化を認めなかった。(4)灌流液中のATP濃度の測定については採取した灌流液中のATP濃度が10-11 μM以下ときわめて低値であった。【考察】(1)粘膜層にはほとんど平滑筋がないが筋層より大きな自律収縮量を有し、粘膜層の自律収縮が平滑筋以外のものに起因すると推測された。(2)薬剤投与の検討では切片により反応が異なっていた。(3)全層切片の自律収縮量は粘膜・筋層切片単独の場合と比較して大きく、粘膜層と筋層とが協調して膀胱全層の自律収縮を形成すると思われた。膀胱壁は薬理反応の違う自律収縮を相互作用させ、形態調節やコンプライアンスの維持を行っていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主に粘膜層の持つ自律収縮量の大きさや、その薬剤反応についての検討を行った。自律収縮の測定系が安定していることがわかり今後更なる検討を追加していく予定である。計画はおおむね順調に達成されていると思われる。またATPの測定に関しては、予想していたより採取したタイロード液中のATP濃度が低く、実験系の調整が必要であること思われた。灌流液内の単位流量中に含まれるATPの濃度を上げるために、組織片の大きさの再考・チャンバーの形態の変更あるいは灌流液の流入速度の再検討が必要があると思われた。更なる改良を加えていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討を行ってみて、粘膜層の自律収縮量には 時間周期的な量的変動あると思われた。今回の検討おける膀胱組織は神経支配を受けていないので、発生する自律収縮の周期的変動は何らかの内因性物質によって制御されている可能性がある。この物質がATPやアセチルコリン等であるかについて興味が持たれる。これまでの検討ではATPの濃度が低く測定感度を向上させる必要があるが、 今後は自律収縮量とこれら生理活性物質との時間的相関性について検討していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の実験が終了せず、平成27年度に施行する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬などの消耗品として使用する。
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