研究課題
本年度はヒト前立腺祖を用いて、TSP-1の発現を検討することを予定していた。そこでヒト前立腺組織におけるTSP-1の発現に着目し、前立腺肥大症の進行に対するバイオマーカーとしての可能性を検討した。まず、当院において経会陰的前立腺針生検を施行し、前立腺癌を認めなかった患者16名を対象とした。移行域から採取した前立腺組織を用いてmRNA抽出、cDNA作成を行い、IL-18、IL-18受容体、TSP-1について定量RT-PCRを施行した。年齢、前立腺体積、PSAと各mRNA発現との相関をPearsonの積率相関係数を用いて検討した。平均年齢は66.1±12.5歳、平均前立腺体積は35.5±20.1ml、平均PSAは6.71±3.90ng/mlであった。年齢と各因子の間に相関は認めなかった。前立腺体積とIL-18、IL-18受容体の間には相関は認めなかったが、TSP-1との間に強い正の相関を認めた(r=0.729)。前述の対象患者のうち、生検時の前立腺体積と生検後の任意の時点で前立腺体積を測定できた8例について、1日あたりの前立腺体積増加量とmRNAの発現との相関を検討した。生検時の前立腺体積は平均40.5±19.0ml、観察期間は平均853.1±412.2日、前立腺体積増加量は平均12.3±12.5mlであった。1日あたりの前立腺体積増加量とTSP-1との間に強い正の相関を認めた(r=0.717)。IL-18から誘導されるTSP-1は前立腺体積、1日あたりの前立腺体積増加量との間に正の相関を認め、前立腺肥大症の進行を予測するマーカーとなり得ることが示唆された
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