研究実績の概要 |
1. 腎障害に対する間葉系幹細胞 (MSC)の治療効果と安全性の検討 a) 雌由来MSCを投与前にPKH-26を用いて赤色蛍光標識し、Sprague-Dawleyラット両側尿管部分結紮モデルに注入後経時的に腎組織を採取して、蛍光顕微鏡を用いてその局在を詳細に評価し、MSCの局在・分化について検討した。尿管部分結紮モデルの作成に難渋するも、蛍光標識されたMSCは腎間質と尿細管に4週間以上にわたり局在した。b) ラットを麻酔後開腹して、1) 培養液のみをvehicleとして下大静脈に注入し、その後両側尿管を部分結紮した閉塞性腎症群、2) 骨髄由来MSCを静注後に尿管結紮したMSC治療群、3) 尿管結紮を行わないSham群を作成した。3日~4週間後に尿、血液、腎組織を採取して上皮間葉系形質転換 (EMT)、腎線維化、それに関与する増殖因子とサイトカインについて評価した。EMTと腎線維化は、MSCの注入により治療後3日~4週間までそれぞれ有意に抑制された。MSC注入によるEMTと腎線維化の抑制には、多くの増殖因子 (TGF-β1, BMP-7, VEGF, FGF, HGF, IGF-1など)やサイトカイン (TNF-α, IL-6, IL-11, IL-18など)のなかでTNF-αの関与が示された。c) 1ヵ月以上生存可能であったラットの観察では、新たな腫瘍発生などは確認されず、MSC注入に伴う危険性は認めなかった。 2. 膀胱障害に対するMSCの治療効果と安全性の検討 ラットの尿道を部分結紮した尿道閉塞モデルの作成を試みるも、膀胱過進展からの膀胱破裂やそれに伴う尿性腹膜炎など、安定かつ確立したモデル作成に至らなかった。臨床的に重要な課題であるため引き続き継続の方針である。
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