研究課題/領域番号 |
26462455
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
山本 新吾 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80322741)
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研究分担者 |
東郷 容和 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (20611370)
山崎 栄樹 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (40514708)
倉園 久生 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (90186487)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大腸菌 / キノロン耐性 / セフェム耐性 / シークエンス / 尿路病原性 |
研究実績の概要 |
1. キノロン感受性尿路病原性大腸菌株89株をLVFX0.5~8μg/ml、4~64μg/ml、32~28μg/ml含有アガー培地で継代培養し、そのうち5株から中等度耐(4~32μg/ml)さらに2株の高度耐性(128μg/ml)を得た。薬剤排出ポンプ関連蛋白およびquorum sensing調整蛋白のmRNA発現レベルを比較したところ、marAにおいては100~1000倍と顕著な増加を示した。128μg/ml耐性株においては元株にはなかったQRDRの3カ所に遺伝子変異がみられた。 2. 抗菌薬併用による抗菌活性の評価 BCプレート(栄研)を用いて、上記で得られたキノロン感受性~高度耐性大腸菌株に対して、さまざまな併用抗菌薬の組み合わせによる抗菌活性を評価した。RFP4μg/ml・CPFX 1μg/mlそれぞれ単独では耐性を示した菌株(Uec314・R2)がRFP2μg/ml・CPFX 1μg/ml併用で感受性を示した。同様にRFP4μg/ml・CPFX 2μg/mlそれぞれ単独では耐性を示した菌株(Uec314・R8)がRFP4μg/ml・CPFX 2μg/ml併用で感受性を示した。その他の抗菌薬では、明らかなキノロン製剤との併用による抗菌活性の増幅効果は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの研究の成果からは、当初の目的であったさまざまな併用抗菌薬の組み合わせによる抗菌活性により、有効に薬剤排出ポンプを抑制する物質を同定するには至ってはいない。この点については今後さらなる検索が必要であると考える。 一方、次の「今後の研究推進方策」にも触れているが、いままでの研究成果から大腸菌にキノロン耐性を誘導すると、セフェム系抗菌薬に対する耐性も同時に誘導されていることが確認されている。2015年度は、元株およびキノロン耐性が誘導された株を対象に、17株すべてに対してパルフィールドを施行することにより、元株とキノロン耐性誘導株が間違いなく同じクローンであることを検証し、さらに30種類以上の抗菌薬に対する感受性を網羅的に調べた。その結果、キノロン耐性誘導と同時に誘導される抗菌薬耐性は主にペニシリン系、第1~3セフェム系、ST合剤、テトラサイクリン系、に観察されるものの、アミノグリコシド系、カルバペネム系では観察されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
大腸菌キノロン耐性誘導に付随するセフェム系抗菌薬耐性誘導機序の解明 上述のように、キノロン耐性が誘導された大腸菌株にセフェム系をはじめ様々な抗菌薬に対する耐性も同時に誘導されていることが確認されている。多くの株はペニシリン系、第1~3セフェム系に対して4~8倍の耐性を示す程度であるが、CMZにいたっては元株の16~32倍の耐性をしめす株も採取されている。これらのキノロン耐性誘導の機序は薬剤排出ポンプの高発現やQRDR(キノロン耐性決定遺伝子領域)変異で説明可能であるが、ペニシリン系およびセフェム系抗菌薬に対する耐性誘導は説明ができないため、元株および対象菌株のホールゲノムシークエンスを行い、キノロン系およびセフェム系耐性の誘導に関与する遺伝子を同定する。2015年末より本格的なシークエンス作業にはいっている。2016年末にはフルシークンスを終えて解析作業に入る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度は、元株およびキノロン耐性が誘導された株を対象に、パルフィールドを施行すること、さらに約30種類の抗菌薬に対する感受性を網羅的に調べるにとどまったため、当初の予定より支出が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度はこれら元株および対象菌株の17株すべてのホールゲノムシークエンスを行い、キノロン系およびセフェム系耐性の誘導に関与する遺伝子を同定する予定であり、当初の計画より多くの経費が必要となるため、次年度に繰越して使用させていただきたい。
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