研究実績の概要 |
マイコプラズマ・ジェニタリウム(M.genitalium)は男子尿道炎の原因菌である。これまで多くの臨床研究が行われ、その病原性は確立された。しかし、わが国ではM. genitalium感染症そのものの名前に保険適用がなく、原因不明のまま検査治療に難渋する尿道炎症例がみられる。本研究では保存M. genitalium株のMIC測定と耐性遺伝子の検討、尿道炎治療失敗例からM.genitaliumの遺伝子を検出し、耐性遺伝子の検討を行った。我々が保存したM.genitalium28株のうちマクロライド耐性を示したものは2株で、AZMのMICが250μg/mL, 32μg/mLであり、いずれも23S rRNAにおける変異(A2058G, A2859G)を示した。キノロン耐性を示した株は1株でキノロンのMICはLVFXμg/mL, MXFX 16μg/mL,STFX 1μg/mLであり、キノロン耐性決定領域(QRDR)のなかで1gyrAでG259A, ASP87→Asn)、parCではG239T (Ser80→Ile)の変異を示した。臨床研究でキノロン薬で治療失敗の3例では、それぞれ以下のようなQRDRの変異を示した。症例1 parC G239T (Ser80→Ile,症例2gyrA G259A (Asp87→Asn)、症例3 gyrA A260G (Asp87→Gly),parC G239T (Ser80→Ile)。 これらを検討すると、gyrA 259, 260遺伝子(Ser87)とparC239遺伝子(ser80)が最もキノロン耐性に関わると考えられた。現在、数個の臨床検体よりM.genitalium培養に施行しているところである。しかし、M.genitaliumの培養は極めて困難であり、数代の継代後に死滅する株が多く見られた。
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