研究課題
ABO血液型不適合腎移植の成績は、われわれが開発した術前脱感作療法によって飛躍的に向上した。多くの症例は抗体関連型拒絶反応(AMR)や血栓性微小血管障害(TMA)を起こさず免疫学的順応に至るが、その誘導・維持機構は不明である。新潟大学で1988年3月から2018年1月までに行ったABO不適合腎移植90例中、4例にAMRが、5例にTMAが発生し、うち3例と2例が移植腎機能を喪失した。TMA症例ではADAMTS13活性が著明に低下しており、移植腎の病理組織学的検討と合わせ、AMR・TMAは抗ドナー血液型抗体が血管内皮細胞の血液型抗原に結合し、補体活性化が起こり、アンカー蛋白であるPECAM1やvWFを介してvWF凝集、ADAMTS13の消費と血小板血栓、Fibrin血栓形成から微小血管障害を生じて惹起される可能性が示唆された。一方、免疫学的順応が成立した患者のBリンパ球培養系では、抗ドナー血液型抗体産生が特異的に抑制されていることを見出した。末梢血中の調節性B細胞と推測される細胞集団(IL-10産生B細胞、CD24+CD38+B細胞、CD5+B細胞)をABO不適合群・適合群、健常者の3群で比較すると、不適合群ではアナジー(免疫学的不応答性)に陥った末梢血CD5+B細胞が有意に多く、繰り返す抗原刺激により抗体産生が抑制されることが推測された。しかし実臨床では高抗体価でもAMR・TMAを惹起しない症例と低抗体価でも惹起する症例があり、抗血液型抗体の特異性が推測された。そこでHEK293細胞膜上に血液型糖鎖とCD31(PECAM-1)を共発現させた細胞を作成し、抽出糖鎖を固相化した糖鎖アレイを開発した。本アレイにより従来の標準赤血球による抗血液型抗体価測定では峻別が難しかった、腎傷害性の高い抗体を測定できる可能性が示唆された。
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Transplantation Proceedings
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