禁忌と言われた血液型・HLA不適合移植が良質な免疫抑制剤を背景に行われ、腎移植後の短期生着率は95%を超える。現在は 濾胞性T細胞(Follicular Helper T-cell; Tfh)とB細胞の関与するde novo DSA (Donor Specific Antibody)による抗体関連型拒絶反応 (AMR; Antibody Mediated rejection) の克服と、免疫抑制剤の長期服用による副作用軽減が課題となっている。AMRを回避するために申請者は免疫順応(移植臓器に対する抗体が存在するにもかかわらず、移植臓器が傷害をうけない状態)における内皮細胞応答の重要性について研究してきた。異種移植、ABO血液型不適合移植で免疫順応が臨床の現場から報告されているが、現段階ではその本質はつかめていない。 DSAの種類によって予後経過が異なることから、免疫順応という概念が生まれた。腎移植においてHLA不適合腎臓移植ではDSA産生と拒絶反応は相関があるが、ABO不適合移植では必ずしも連動しない。申請者らは少量のHLA抗体接着であればHO-1やFerritinといった細胞保護遺伝子が誘導されること、さらに内皮細胞の活性化に関与するERK分子の不活性化と補体制御因子の誘導がAB抗体接着で引き起こされることを明らかにした。 さらに、我々のグループにおいて、ABO不適合移植患者では適合患者と比べHLA class II DRに対するde novo DSAの出現頻度が少ないことがわかった(投稿中)。In vitro ではanti-A/B抗体接着は、内皮細胞においてHLA class DRの発現を低下させることを最近明らかにし、報告した。
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