色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)は、日光紫外線による高頻度の皮膚癌発生と進行性の精神神経症状、さらに精巣発育不全を臨床的特徴とし、ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair:NER)に異常をもつ遺伝疾患である。これまで我々は、A群色素性乾皮症遺伝子(Xpa遺伝子)を欠損したXpa遺伝子欠損マウス(Xpaマウス)の解析から、このマウスがXP患者と同様に精子形成不全を示しXPの病態モデルとなることを明らかにした。これまでの解析から、Xpaマウス精巣の精巣幹細胞が、精巣変性状態に適応かつ生存し、ゲノムの質は低下しても精子形成を継続する病態となるという仮説を持っている。本研究は、精子ゲノムの質の低下を生じる精巣病態を解明するために、Xpaマウス精巣変性状態での精子形成を継続する精細管に着目し、Xpaマウス精巣と空胞様構造をもつ精子の解析を行う。 上記目的を達成するために、本年は以下の実験を行った。空胞変性の特異的抗体で、免疫染色やウエスタンブロットを行い、Xpaマウス精巣が空胞を形成し、変性する病態を明らかにすることができた(投稿準備中)。また、Xpaマウス精巣における空胞化変性の検索をin vivoで行うために、空胞化変性のマーカーをもつXpaマウスを作成し、各週令マウスが得られつつある。各週令のマウス精巣・精子で、サンプル採取の時期や検出方法の詳細な条件検討を行いながら、空胞様構造をもつ精子の同定を試みている。特に、同定する構造が精子内の微細構造のため、電顕等の方法も用いて検討している。今後、上記の実験をさらに進め仮説の検証を行う予定である。本解析を通じ、Xpaマウス精巣と空胞様構造をもつ精子の病態解明が進むと考えている。
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