研究課題
妊娠を望んでいる夫婦の1割が不妊で悩んでおり、その原因の半分は男性側にあるといわれている。しかしながら、その病因、病態は未だ明らかにされていない。そこで本研究では、男性不妊症の原因遺伝子を同定するため、本年度は以下の2項目について検討を行った。1.生殖能力が有ると確認された男性と一般集団の男性を対象とした精液パラメータ関連遺伝子の同定:既に集めた一般集団の男性800検体について、イルミナ社のHumanCore v1.0 DNA Analysis Kitを用いて、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。タイピング後、解析ソフトであるPLINKを用いて、精子濃度、精液量、精子運動率、総精子数、総運動精子数との関連解析を行った。解析の結果、有意水準10-5以下を満たす複数のSNPが抽出された。今後、これらのSNPについて、他に集めた生殖能力が有ると確認された男性700検体についてタイピングを行い、精液パラメータ値に影響を及ぼす遺伝子の同定を目指す。2.無精子症患者と家系を対象とした無精子症関連遺伝子の同定:無精子症原因遺伝子を同定するため、本年度は研究分担者の協力のもと、無精子症患者の検体をおよそ20例収集した。さらに、無精子症患者の家系1組について収集することができた。収集した無精子症患者の家系1組について、次世代シーケンサー(イルミナ社HiSeq2000)を用いて、エクソン領域をターゲットとしたシーケンス解析を行った。参照配列へのマッピング及びvariation解析からゲノム上の変異を抽出した。現在、不妊症患者のみにみられるゲノム上の変異を解析中である。
2: おおむね順調に進展している
1.生殖能力が有ると確認された男性と一般集団の男性を対象とした精液パラメータ関連遺伝子の同定においては、当初、解析検体数300~500人であったが、本年度はそれを上回る800人を対象に全ゲノムSNPジェノタイピングを行うことができた。また、計画通りに精液パラメータ値との関連解析から候補SNPを抽出することができた。2.無精子症患者と家系を対象とした無精子症関連遺伝子の同定においては、当初、男性不妊症の検体収集を行うことを中心に計画していたが、本年度は検体収集に加え、次世代シーケンサーを用いた塩基配列の解析まで行うことができた。
1.生殖能力が有ると確認された男性と一般集団の男性を対象とした精液パラメータ関連遺伝子の同定については、精液パラメータと関連性が抽出されたSNPについて、他に集めた生殖能力が有ると確認された男性700検体についてタイピングを行い、再現性の検討を行う。また、一般集団の男性を対象としたGWASの結果と生殖能力が有ると確認された男性を対象とした再現性の解析結果をメタ解析により統合し、精液パラメータ関連遺伝子を同定する。2.無精子症患者と家系を対象とした無精子症関連遺伝子の同定については、引き続き、不妊症患者の検体を収集し、次世代シーケンサーを用いて塩基配列の解析を行う。無精子症患者のみにみられるゲノム上の変異を検索し、無精子症関連遺伝子を同定する。
当初の予定より、PCR 装置が安価で購入できたため。また、一部購入済みであるが、支払が次年度であるため。
翌年度の助成金とあわせて、消耗品費に使用予定である。
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