研究課題/領域番号 |
26462464
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
尾本 和也 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (90343558)
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研究分担者 |
土岐 大介 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (60568591)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腎移植 / 抗体関連型拒絶 / 感作 / 免疫グロブリン / 調節性T細胞 / 抗ドナー抗体 / BAFF |
研究実績の概要 |
1.皮膚感作による抗ドナー抗体の動態 ラットのドナー皮膚を別の種類のレシピエントに移植し、経時的に血清を採取した。その血清をドナーのT細胞と反応させ、抗ドナー抗体を、蛍光量で定量化できるシステム(MolecuIes of Equivalent Solule Fluorochrome;MESF)を用いて測定した。結果として皮膚移植後抗IgG抗体が3-4週間をピークに上昇し、その後徐々に低下することをまず確認できた。抗体量は信号強度を表すflow intensityとして70,000から100,000程度とややばらついていることも判明した。この抗体はドナーと別種のラット、またはレシピエントラットに対する抗体ではなく、ドナーに対するIgGであり、ドナー特異的IgG抗体といえる。 2.タクロリムス投与による抗ドナー抗体の推移 次にこれらの抗体の産生抑制を免疫抑制剤にて抑制できるかどうかを検討した。同様の系に臨床で使用されている免疫抑制剤のタクロリムスを皮膚移植3日前から投与し、合計で14日間投与した場合、投与期間中ラット皮膚移植片が拒絶されず、生着したままであり、このことを反映していると思われるがドナーに対する抗体も産生されなかった。しかしながらラット皮膚移植後2週間ののちに14日間タクロリムスを投与した場合はやや抗体産生能を低下するものの皮膚移植後3-4週間のピークにて抗ドナーIgG抗体の産生が認められた。このことは一度レシピエントがドナー抗原に感作され、その抗原に対するメモリー細胞が形成された場合はタクロリムスを投与されてもその抗体産生能を抑制することが難しいことを表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目の到達目標の一つは皮膚移植後抗体産生がどのような動態をとるか確認することであった。前回の報告では非常に大きな皮膚移植片を用いたが、今回の研究では皮膚移植片も大きさを小さくしており、それによって抗体産生量と動態が変化することを確認する必要があった。その結果抗体産生のピークが2週間前後から3-4週間と1週間ほどずれた印象はあるものの予想された結果となっており、今後の実験をこのデータを基に実験計画を組むことが可能である。 免疫抑制剤のタクロリムスとの併用に対する結果については、皮膚移植片前からの投与でも多少の抗体産生が予想されたが、2-5 mg/kgの投与量ではかなり強力に抑制されるためか抗ドナー抗体はほとんど産生されなかった。これに対して、一度皮膚移植した場合はこれほど強力な薬剤を使用してもある程度抗体が産生されることから、一度感作された状態では、なかなかコントロールが難しいことが予想され今後の実験の課題となると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降はドナー皮膚移植片にて感作した症例に腎移植を行い、その組織を経時的(移植後12時間、24時間、48時間)に採取後病理学的検討を行う。特に、傍尿細管毛細血管への細胞浸潤、血管炎や糸球体炎がどのような順序で発症するかを検討する。同時に免疫グロブリン大量投与(intravenous immunoglobulin therapy: IVIG)を感作ラットに行い、抗ドナー抗体の産生が低下するかどうかの検討を行い、低下するのであれば腎移植を行ってその組織学的検討を行う。これによって組織学的な差が有意にあるとすれば、その後は腎移植の生着に差があるのか、免疫抑制剤やIVIGによってどの部分が影響を受けているのか検討する。特にIVIGによる脱感作療法は臨床的効果があるといわれるものの作用機序はいまだ不明な点が多いのが現状である。B細胞への影響、B細胞の活性化因子であるBAFFの推移や調節性T細胞、各種サイトカインの関与などを明らかにする方向で研究を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より一部腎移植施行後の病理、細胞解析などが行えなかった。このため解析用のフローサイトメータなどの抗体購入が来年度に持ち越されたことが理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
おもに細胞解析用の抗体購入に充てられる予定。また培養フラスコ、ピペットなどの購入にも充てられる。
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