研究課題
本研究では、受精の過程において精子の運動能・受精能が精嚢分泌タンパク質によって調節されるメカニズムについて解明することを最終目的としている。本申請課題の研究期間においては精嚢分泌タンパク質による精子膜構造の制御を介した精子受精能獲得の抑制機構について、主にヒトを対象として研究を行っている。受精能獲得がコレステロールの流出で起こることは周知の事実である。そこで、主にコレステロールによって制御される脂質ラフト構成成分であるガングリオシドGM1、また、精子最外表面をコートしていると考えられるグリコカリックスとその構造の中心を担うβディフェンシン126、つまり、精子の表面に存在する糖鎖への精嚢分泌タンパク質の作用について検討した。最終年度である平成28年度は前年度の結果から、1)精子膜のコレステロールに関してはfliipinによる染色を用いて観察を行い、2)ヒト精嚢分泌タンパク質であるSEMGとガングリオシドGM1の相互作用については前年度に引き続き水晶発振子マイクロバランス法による検討を行った。また、3)βディフェンシン126遺伝子多型検査については前年度に引き続き、さらに臨床検体59例についての多型解析を行った。その結果、1)については検討した条件ではSEMG添加による明確な差が見られなかった。2)についてはGM1との結合が検出できたのでさらにGM2との結合についても検討し、GM2にも同様に結合することが示された。3)については前年度までの取得データとあわせて男性不妊症患者検体159例中、wt/wtが39例(24.5%)、wt/delが76例(47.8%)、del/delが44例(27.7%)であり、先行研究における正常検体での検討と比較してその頻度には特記すべき特徴は無かった。しかしながら、正常検体においてはdel/delで挙児に至るまでの時間の延長が見られており、今後これら患者の臨床データとの詳細な関連解析が必要であると考えられる。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Journal of Reproduction Engineering
巻: 18 ページ: 5-10
Reproduction (Cambridge, England)
巻: 152 ページ: 313-321
10.1530/REP-15-0551
http://toin.ac.jp/univ/faculty/professor/