研究課題/領域番号 |
26462474
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
五十嵐 秀樹 山形大学, 医学部, 助教 (80333970)
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研究分担者 |
高橋 俊文 山形大学, 医学部, 講師 (20302292)
網田 光善 山形大学, 医学部, 助教 (30420061)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 加齢卵 / マウス / 小胞体ストレス |
研究実績の概要 |
マウス卵は卵巣内での酸化ストレスに加え、排卵時にもTNF-α、IL-6などのサイトカインに暴露される。これらいずれも小胞体ストレスを誘導することが報告されている。よって、排卵後の未受精卵は小胞体ストレスに暴露され、これが小胞体ストレス応答(UPR)を超えた場合、受精率と胚発生に影響を及ぼすと考えられる。この仮説を証明する目的に未受精卵、初期胚から胚盤胞までの小胞体ストレスを小胞体ストレス時に誘導される分子シャペロンであるBiPの発現により評価した。結果、未受精卵で最もBiP発現が増強しており、胚発生に伴い発現の減弱が確認された。つまり、未受精卵は強い小胞体ストレスに暴露されていると推測された。 加齢卵モデルとして排卵後加齢マウス卵、また小胞体ストレスを誘導した卵の受精率と胚発生を検討した。排卵後加齢卵では体外受精後の受精率(2細胞期胚)、その後の胚発生率は新鮮卵と比較していずれも有意に低下していた。また、この際のBiP発現は加齢卵で増強を認めた。Thapsigargin(Tg:小胞体カルシウムポンプの阻害剤)による小胞体ストレス誘導では体外受精後の受精率、その後の胚発生率は新鮮卵と比較していずれも有意に低下していた。Tunicamycin(Tu:糖鎖合成阻害剤)による小胞体ストレス誘導では低濃度処理群と高濃度処理群で検討を行った。低濃度処理群では受精率と桑実胚までの胚発生には影響を及ぼさなかったが、胚盤胞以降の胚発生は有意に悪化した。高濃度処理群では受精率が有意に低下し、その後の胚発生も初期胚から有意に悪化した。マウス卵・胚のBiP発現は未受精卵で最も強く、胚発育に伴い減少しました。加齢卵ではBiP発現が増強しており、加齢卵は過度の小胞体ストレスに暴露されている可能性が示唆された。Tg、Tu処理卵の実験結果と合わせ、加齢卵への過度の小胞体ストレスが加齢卵の受精率の低下、胚発育の悪化に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
加齢(老齢)マウス作成に50週程度を要するため、加齢(老齢)マウス卵での検討には至らなかった。また、小胞体ストレスの評価方法をBiPから、最近の報告でより用いられているGRP78に変更して再評価を行っている。この為、予定より研究の進捗状況は遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
加齢(老齢)マウスを作成後、速やかに卵を採取し酸化ストレスと小胞体ストレスの解析を行う。また、排卵後加齢マウスモデルは卵子の採取が容易で有り、実験系の確立、加齢のメカニズム解析にも有用であるので加齢モデルマウスの研究と平行して進める予定である。最近になり、小胞体ストレス阻害剤による他の細胞種、臓器の保護作用が報告されている。この知見は小胞体ストレスによる加齢卵の受精率低下、胚発生悪化の抑制にも応用出来る可能性が有り、研究を進める予定である。
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