研究実績の概要 |
1.マウス排卵後加齢卵モデルを用いて、体細胞(肝細胞)由来ミトコンドリアが加齢卵のミトコンドリア機能を改善し、受精率と胚発生を改善するかを検討した。結果、ミトコンドリア機能を卵酸素消費量で評価した際、体細胞ミトコンドリア移植により加齢卵の酸素消費量が増加した。つまりミトコンドリア機能は改善した。しかし、授精率および胚発生に有意な改善は認められなかった。この結果は下記論文として発表した。 Igarashi H, Takahashi T, Abe H, et.al.,Poor embryo development in post-ovulatory in vivo-aged mouse oocytes is associated with mitochondrial dysfunction, but mitochondrial transfer from somatic cells is not sufficient for rejuvenation. Hum Reprod. 31: 2331-2338, 2016.
2.マウス排卵後加齢卵モデルを用いて、卵加齢メカニズムに小胞体ストレスが関与するか検討した。新鮮卵において小胞体ストレス時に誘導される分子シャペロンであるGRP78は未受精卵で最も高発現し、その後の胚発生に伴って減弱することが明らかとなった。また、GRP78の発現は加齢卵において新鮮卵に比較して有意に発現が強かった。この結果は加齢卵では過度の小胞体ストレスに暴露されていることを示唆する。
3.小胞体ストレス制御剤のsalubrinalで加齢未受精卵を処理するとGRP78の発現が低下し、小胞体シグナルセンサーであるIRE1経路のeIF2αの脱リン酸化を阻害した。処理後の加齢卵は発生不良卵であるフラグメント胚が有意に減少し、胚盤胞以降の胚発生が有意に改善した。
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