研究課題/領域番号 |
26462476
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原田 美由紀 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70451812)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 卵巣 / 小胞体ストレス応答 |
研究実績の概要 |
(背景と目的)卵胞発育は内分泌因子ならびに各種局所因子による調節のもと厳密に制御されたダイナミックな変化であり、そこでは血管新生が重要な役割を果たしている。一方、小胞体ストレス応答は種々の臓器における細胞の恒常性維持ならびに病態に深く関わることが明らかとなっている。我々はこれまで小胞体ストレス応答が発育過程の卵胞において惹起されており、卵子の質の良否とも関係することを示してきた。本研究では、小胞体ストレス応答が血管新生調節を介して卵胞発育の制御において重要な役割を担うのではないか、という仮説を検証することを目的とする。 (方法と結果)①ヒト卵丘細胞(顆粒膜細胞のうち卵子周囲を取り巻くもの)卵丘細胞におけるspliced XBP1 (sXBP1; 小胞体ストレス応答因子の一つ)mRNA発現は、中等症以上の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)発症群において、OHSS非発症群に比し有意に増加していた。②ヒト培養顆粒膜細胞(GC)に小胞体ストレス誘導剤Tunicamycin (Tm)を添加することにとりsXBP1, VEGF(血管上皮増殖因子)mRNA発現が促進した。③Tm前処理により、hCG反応性にGCにおけるVEGFmRNA発現は前処理をしない群に比し増強した。またsXBP1をノックダウンしたGCにおいてはこの増強効果は減弱していた。④③において、Tm処理をする前に小胞体ストレス抑制剤(TUDCA)処理を行なった際に、Tm下すなわち小胞体ストレス下での、hCG応答性のVEGF発現は抑制された。 (意義と重要性)不妊治療における卵巣刺激の最大の副作用であり、卵巣局所のVEGF過剰産生により惹起されるOHSSの病態における小胞体ストレスが関与する可能性が示された。すでに肝機能障害の治療薬として臨床使用されているTUDCAがOHSSの治療薬として使用できる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、初年度の平成26年度において、ヒト顆粒膜細胞を用いたin vitroの実験は、Tunicamycin投与のVEGF発現に与える影響の検討、また添加時間、量の最適化が順調に進んでいる。さらにhCG刺激によるLH受容体を介した経路との関連の有無の検討も進んでおり、その機序の解析も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)培養細胞を用いた実験 平成26年度に、mRNA発現の解析、作用機序の解析はおおむね終了したため、これをふまえて現在、VEGFタンパク産生の解析を進めている。 2)OHSSモデルラットを用いた実験 in vitroの実験結果を踏まえて、ラットOHSSモデルを用いた生体内での解析を現在始めている。まずはOHSSモデルの安定的な確立に努める。ここに小胞体ストレス阻害剤(TUDCA)投与することによる治療効果の解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養に使用する試薬、プラスチック器具などのまとめ買いや、同じ教室内の他の研究者の使用していた試薬の余剰分を使用することにより、経費を節約することができた。また、当初の計画よりも、生体内での現象を見るための動物実験の比重が大きくなったため、動物実験に使用する田めの平成27年度以降の使用金額がかさむことが予想されたため26年度から繰り越している。
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次年度使用額の使用計画 |
1)培養細胞を用いた実験:平成26年度に、mRNA発現の解析、作用機序の解析はおおむね終了したため、これをふまえて現在、VEGFタンパク産生の解析を進めている。 2)OHSSモデルラットを用いた実験:in vitroの実験結果を踏まえて、ラットOHSSモデルを用いた生体内での解析を現在始めている。まずはOHSSモデルの安定的な確立に努める。ここに小胞体ストレス阻害剤(TUDCA)投与することによる治療効果の解析を進める予定である。
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