研究課題/領域番号 |
26462482
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
田村 直顕 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (90402370)
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研究分担者 |
谷口 千津子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (20397425)
金山 尚裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70204550)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 羊水塞栓症 / 後産期出血 / 子宮弛緩 / アナフィラクトイド反応 |
研究実績の概要 |
平成26年度は主に羊水塞栓症が後産期出血の原因として考えられ摘出された子宮組織の病理学的解析を中心の行った。子宮体部筋層において免疫細胞の同定を行った結果、トリプターゼ陽性細胞においてc-Kitが共発現していたことより、同細胞が肥満細胞であることを確認した。また、マクロファージ、好中球を同定するためにCD68染色、エラスターゼ染色を行い、コントロールである正常産褥子宮に比べ羊水塞栓症の子宮体部筋層において、それぞれ陽性細胞の有意な増加を認めた。一方、CD3染色によるT細胞の同定では羊水塞栓症の子宮においても、コントロールと同様に陽性細胞は存在しなかった。アナフィラトキシン受容体であるC5aR(CD88)の陽性細胞は、羊水塞栓症の子宮体部筋層に多く認められていたが、トリプターゼ、CD68、エラスターゼ陽性細胞に共発現していたことから、これらの免疫細胞がアナフィラクトイド反応に関与することが示唆される結果となった。また、これらの子宮体部筋層に共通する組織学的所見として間質浮腫を認め、マクロ所見としても摘出子宮の腫大を認めた。 また、当院倫理委員会の承認を経て、臨床的羊水塞栓症に対するC1インヒビター濃縮製剤の有効性と安全性についての臨床研究も開始した。依然、症例数は限定されているが、臨床的羊水塞栓症に対してC1インヒビター濃縮製剤を投与された症例の経過から、C1インヒビター濃縮製剤が羊水塞栓症において補体値の改善、ショックバイタルから回復、子宮収縮の作用があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較的、豊富な臨床的羊水塞栓症症例の子宮を解析し、子宮体部筋層において肥満細胞、好中球、マクロファージが多数存在することが明らかとなった。これらはアナフィラトキシン受容体陽性細胞である可能性が高いことも判明した。また、臨床的羊水塞栓症に対するC1インヒビター濃縮製剤の有効性と安全性についての臨床研究も実現し、限定的ながら症例を蓄積し評価、解析が可能な状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記のインビトロまたは動物実験系を用いて、羊水塞栓症とアナフィラクトイド反応、子宮弛緩などの関係を検討する。インビトロ系として、肥満細胞、マクロファージ、好中球などの培養系を確立し、子宮筋細胞、免疫細胞、羊水の存在の有無の条件下で、子宮筋の形態、子宮筋間隙の状態、収縮能について解析を行う。実験動物による羊水塞栓症様症候モデルにおいて、アナフィラクトイド反応機序抑制の観点から、C1INH製剤、抗アレルギー薬、ステロイドなどの有効性について検証する。羊水塞栓症様症候モデルとして妊娠ラットを用いて、補体系、凝固系の解析、および主に肺、腎、子宮の組織解析を行うことを計画している。 また、臨床的羊水塞栓症におけるC1インヒビター濃縮製剤の効果と安全性についての臨床研究を継続するとともに、羊水塞栓症とC1インヒビター活性低下の関係について検証する。この点、羊水・胎児成分により、C1インヒビター蛋白切断や構造変化、活性領域が阻害される可能性が考えられるため、血漿中のC1インヒビター濃度を測定し抗原量と活性値に乖離がないか、また、羊水成分の存在下でのC1インヒビターの安定性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は主に子宮組織における免疫組織学的検討を行ったが、当初の予定より免疫担当細胞の同定が円滑に進み当該助成金が生じた。一方、C1インヒビター濃縮製剤に関する臨床研究の症例数がより少なかったことから、そのデータ解析に見込まれた費用が当初の予定より少なく当該助成金が生じる原因となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は臨床研究体制の改善により臨床的羊水塞栓症に対するC1インヒビター濃縮製剤の臨床試験の症例数が増加することが見込まれ、それらの検体処理、データ解析に当該助成金を当てさせていただく。また、主に細胞培養系と動物実験系を行うため、培養細胞と実験動物の導入とその後の維持、管理に当該助成金を当てることを計画している。
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