研究課題
昨年度までと同様に、羊水塞栓症と子宮弛緩を呈する難治性後産期出血の病態の関連性について、正常妊娠子宮をコントロールとして解析を行った。これまでに、難治性後産期出血の子宮体部筋層において、好中球、マクロファージの浸潤と肥満細胞、活性化肥満細胞の浸潤所見を見出し、後産期急性子宮筋層炎という病理組織学的概念の存在を提唱したが、本病理組織においては、ケミカルメディエーターの一つであるブラジキニンの受容体のうち、炎症部位に特異的に発現するタイプのB1Rの発現が強いことが明らかとなった。また、mRNAの発現について、網羅的にコントロールの妊娠子宮体部筋層と比較するためにマイクロアレイ解析を行ったところ、後産期急性子宮筋層炎を認める子宮体部筋層では子宮収縮関連タンパク質であるギャプジャンクションタンパク質の発現の低下、リラキシンの発現の増加を認めた。コネキシン43とオキシトシン受容体に着目し、染色強度からタンパク質レベルを比較した結果、後産期急性子宮筋層炎の子宮筋組織では、これらの子宮収縮関連タンパク質の発現が有意に低下していることが明らかとなった。また、難治性後産期出血を呈し、臨床的に羊水塞栓症のエントリー基準を満たす症例に対して、多施設共同研究としてC1インヒビター濃縮製剤の有効性の検証を継続してきたが、C1インヒビター濃縮製剤が投与された9症例のうち6症例に子宮収縮改善効果とC1インヒビター活性の上昇を認め、有害事象は発生せず、良好な転機をたどったことが明らかとなった。
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