絨毛外絨毛細胞(EVT)の浸潤不良による血管床リモデリング不良は胎児発育不全や妊娠高血圧症候群発症に関与している。一方、細胞周囲の各種プロテアーゼはPARsを介して多様な細胞内へのシグナル伝達を行い、一部は細胞遊走、浸潤にも関与。本年度では、従来報告が乏しい以下の2点を検討した。 I) 妊娠7週の妊娠初期の絨毛組織におけるPAR-2発現を検討した。また、II) 炎症性サイトカインの不死化絨毛細胞株TCL-1(以下T)、 HTR-8/SVneo(以下H)でのPAR-2発現への作用を検討した。方法I)正常絨毛組織におけるPAR-2発現の局在をABC法により免疫組織学的により検討した。連続切片におけるHE染色標本によりcytotrophoblastの局在を確認した。II)TNF-αまたはIL-1βを添加し、経時的PAR-2タンパク発現、ならびにPAR-2mRNA発現をWestern blott法ならびにRT-PCR法により検討を行った。用いたPAR-2 antisense は5′-GGTTCACGATGACCCAATACCT-3である。 結果I) cytotrophoblastに強く局在を示した。syncytiotrophoblastには局在を認めなかった。II) 1)TNF-αによりTではAR-2タンパク発現は24時間後約50%に低下、Hでは同約13%に低下、また同抑制は抗TNF-α多クローン抗体により抑制された。non-immune control IgG 存在下ではPAR-2発現は一定で変化なかった。2)T PAR-2mRNAはTNF-α、IL-1βにより約20%減少するが、HではPAR-2mRNAは約50%減少した。 結論 TNF-α、IL-1βにより、特にHでは、生理的に発現しているPAR-2発現が抑制されたことより、EVTの細胞遊走浸潤が抑制される可能性がある。
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