研究課題/領域番号 |
26462484
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小谷 友美 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (70359751)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 絨毛膜羊膜炎 / エンドセリン / 気管支肺異形成 / 脳障害 / 炎症 / 水素 |
研究実績の概要 |
早産児の後遺障害と相関することが知られている絨毛膜羊膜炎症例と妊娠週数を一致させた産科合併症のない対照症例において、羊膜、絨毛膜、脱落膜におけるエンドセリン(子宮収縮作用あり)および関連蛋白の発現を免疫組織染色法で比較検討したところ、前者で有意な増加を認めた。またヒト羊膜を用いた実験では、これらの蛋白が大腸菌由来のリポ多糖の刺激によりToll-like receptor-4を介して、発現増加することが観察された。これらの結果から、感染による早産での病態にエンドセリンの増加が関与していることが明らかとなった。また、こうした炎症を抑える新規の治療法として、分子状水素に着目しているが、ラット動物モデルにおいて大腸菌由来のリポ多糖の投与により生じる胎仔の肺障害を母獣に分子状水素を飽和させた水素水を投与することによって軽減することが明らかとなった。こうした障害では炎症性サイトカインの上昇や酸化ストレス障害が関与していることまたこれらを抑制することにより、肺障害が軽減していることが明らかとなった。さらに早産児の後遺障害として脳障害に並んで重篤な気管支肺異形成症の病態に関係すると報告されている血管増生因子や基質分解酵素などが水素水投与によって発現変化することも明らかとなり、水素水により肺障害が改善するメカニズムが明らかとなった。また、同様のモデルをマウスで作成し、母獣に水素水を投与することによって、胎仔脳切片におけるニューロンの細胞死の減少、DNAや脂質への酸化障害の抑制が観察された。また活性型ミクログリアの増加を抑制する効果も認められた。こうした障害の減少に加え、胎仔の死亡率も軽減した。これらから、分子状水素が早産児の後遺障害の減少させる効果を有する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌由来のリポ多糖投与による胎仔の障害モデルを確立し、新規治療法として着目した分子状水素で効果を確認することができた。また、肺障害に関しては、細胞実験も行い、水素の作用機序の一部を明らかにすることができた。脳障害に関しては、今後ミクログリアに着目し、その分子メカニズムを解明していく手がかりを得た。ヒトにおいては羊膜実験にて水素を投与し変化を確認する前段階として、今年度は絨毛膜羊膜炎でのエンドセリンの増加および羊膜実験でのエンドセリンの増加を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
動物モデルにおいて母獣への水素水投与による胎仔障害の抑制効果は明らかとなってきたので、今後はそのメカニズムを解明していくことを目標とする。また、一方で臨床応用に向けて、妊娠中の水素投与による安全性の評価、発症前投与のみでなく発症と同時あるいは発症後投与の効果や様々な水素濃度も検討していき、水素のより効果的な投与法を検討していく。
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