研究課題
前年度に引き続き、妊娠マウスの炎症モデルにおいて、母獣に分子状水素を投与することで、仔への傷害が改善するメカニズムの解明をおこなった。炎症により、血液中に増加するET-1(エンドセリン)およびその合成に関与するECE-1(エンドセリン変換酵素)に着目した。子宮筋および卵膜、胎盤において、炎症モデルでは発現が亢進しており、水素投与群ではこれらの発現の抑制が認められた。この結果は、これまでの臨床検体を用いた検討をほぼ裏付ける結果と考えられた。したがって、仔に直接移行して効果を示すだけでなく、母体胎児境界面における炎症にも水素が抗炎症として作用し、仔への効果を示している可能性が示唆された。また、仔の機能的予後として、行動実験モデルを用いて、生後3-4週令において、自閉症スペクトラム様所見について検討したところ、炎症モデルの仔については自閉症スペクトラム様所見が認められたが、水素投与群では、改善が認められた。現在引き続き、検討中である。その他、臨床検体で、絨毛膜羊膜炎の合併がある早産胎盤と合併のない早産胎盤において、TLR5の発現が変化することが明らかとなった。これは、これまで解析してきたTLR4以外にもあらたな系が炎症モデルにおける病態に関与している可能性を示唆する結果であった。また、子宮動脈減少させることによる酸化ストレスで妊娠高血圧腎症様の所見を呈するラットのモデルを用いて、母獣への分子状水素を投与することで、血圧上昇、血管内皮障害のsflt-1の減少などが認められ、妊娠高血圧腎症の胎盤絨毛を組織培養も行い、正常妊婦の胎盤絨毛よりも、産生亢進を認めたsflt-1が、組織培養中に水素添加することで産生が減少することを示した。
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