研究課題/領域番号 |
26462488
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金川 武司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40346218)
|
研究分担者 |
味村 和哉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50437422)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 既存薬ライブラリー / 妊娠性高血圧症候群 / sFlt1 / soluble Endoglin / placental growth factor / HUVEC / vardenafil |
研究実績の概要 |
われわれは、胎児死亡・母体死亡の主な原因となっている妊娠性高血圧症候群(Pregnancy Induced Hypertensio,PIH)の治療戦略として、PIHの誘発因子として考えられているsFlt1(soluble fms-like tyrosine kinase)やsEng(soluble Endoglin)のコントロール、および抑制因子として考えられているPlGF(placental growth factor)を誘導することに着目してきた。そこで、妊婦に対して安全性が確認されている旧来から用いられている薬物(old drug)は、実は上記3因子をコントロールできる作用あり、ひいては、新たな薬物(new drug)として治療に応用できないか検討してきた。これまでの先行研究で、候補となる薬物は6種類(nitrendipine、idebenone、l-isoprenaline HCl、tosufloxacin tosilate、vardenafil hydrochloride hydrate、ipriflavone)にまで絞った。 本研究では、候補となった6種類の薬物について、母体血管内皮モデルを用いて、薬剤濃度ごとのPlGF発現をELISA法やRT-PCR法にて、治療薬になりうる薬物を検討した。その結果、vardenafilが最もPlGFの分泌を最も誘導することが明らかになった。更に、HUVECを用いてvardenafilの血管新生作用をtube formation assayにて評価したところ、vardenafilが最も血管新生能を有することがわかった。これは、sFlt1やsEngの存在下においても、vardenafilにより、血管新生能が保たれた。この新真実は、Reprod Sci.(PMID:25736325)に報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、PIH治療において鍵となるPlGFの発現を促進し、また血管新生能を有する薬剤を抽出することを目的として研究を行った。すなわち、我々はこれまでの検討で、既存薬ライブラリーを用いた網羅的解析により、528種類の薬剤から、催奇形性等の問題がなく、妊娠中安全に使用でき、かつPlGF発現を促進した上位6薬剤(nitrendipine、idebenone、l-isoprenaline HCl、tosufloxacin tosilate、vardenafil hydrochloride hydrate、ipriflavone)を抽出したが、これら6種類の薬剤について、薬剤濃度ごとのPlGF発現を、ELISA法やRT-PCR法を用いて評価する。また、それぞれの薬剤の血管新生作用を、tube formation assayを用いて評価する。これらが、平成26年度の治療計画であった。 具体的には、①ELISA法やRT-PCR法を用いたPlGF発現の評価、②PlGFを誘導される至適時間の検討、③RT-PCR法による検討、さらに④ HUVECを用いたtube formation assayを行い、上記⑥種類のうち、もっとも効果的にPlGF発現する薬剤、またもっとも効果的に血管新生作用を有する薬剤を検討した。結果、vardenafilがPIHの治療薬として最も有望であることが見い出した。 以上より、平成26年度に計画された検討事項がすべて行われ、結果を報告しているため、順調に研究計画が実施されていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度の計画 は、昨年度のin vitroの結果を踏まえて、in vivoでの検討を予定している。すなわち、妊娠マウスの胎盤特異的遺伝子発現系を用いて妊娠高血圧症モデル用いて検討する。 これまで我々の教室で確立したPIHモデルを用いて、PlGF発現を促進し、血管新生能を有するPIH治療の新規薬剤確立したvardenafilを、前述のPIHモデルに投与して、下記について検討する。 1. PIHモデルを用いて、高血圧を認めはじめる胎生16.5日目に、前述の検討で得られた新規薬剤を投与群と生食(コントロール)群に分けて、胎生8.5~18.5日に、①血圧をBP98A (Softron)よるtail-cuff methodにより非観血的に測定、②マウス血清中sFLT1、sEng、PlGFをELISA法により測定、③マウス尿中アルブミン、クレアチニン、アルブミン/クレアチニン比をFuji DRI-CHEM 3500V およびDRICHEMにより測定、④新生仔マウスの体重(子宮内胎児発育不全の発生率)、死産率 以上の検討により、母獣及び新生仔の予後を解析し、動物モデルにおける薬剤の効果を検証する。また、至適投薬量や投与時期・期間についても、検討を行う。 2. wildマウスにも前述の検討で得られた至適投薬量や投与時期・期間に投与し、母獣及び新生仔の副作用の有無についても検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
27年度に物品費、旅費等の使用を見越し、控えていた。
|
次年度使用額の使用計画 |
物品費、旅費に繰り越し分を充当する。
|