研究課題/領域番号 |
26462489
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山田 秀人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40220397)
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研究分担者 |
出口 雅士 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (50403291)
谷村 憲司 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (80593988)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗リン脂質抗体 / MHC / β2GPI |
研究実績の概要 |
β2GPIとMHCクラスⅡ分子を共発現させた293T細胞を用いて、MHCクラスⅡ分子にβ2GPI蛋白分子が提示されるかをフローサイトメトリーにて解析した。抗リン脂質抗体症候群(APS)に感受性であるHLA-DR4, DR7は、β2GPIを細胞表面に提示した。しかし、β2GPI単独を293Tに形質移入しても細胞表面にβ2GPIは発現しなかった。 β2GPIとMHCクラスⅡ分子を共発現させた293T細胞を溶解し、抗HLA-DR抗体固定化ビーズで免疫沈降したところ、β2GPIがHLA-DRと共沈降された。これらの結果より、β2GPIは分泌蛋白であるために単独で形質移入しても細胞表面に発現しないが、MHCクラスⅡ分子と共発現させることによって、MHCクラスⅡ分子とβ2GPIが複合体を形成して細胞表面に表出されることが分かった。 APS患者の自己抗体がβ2GPとMHCクラスⅡ分子の複合体(β2GP/MHCクラスⅡ複合体)を認識できるかを調べた。β2GPIとMHCクラスⅡ分子を共発現させた293T細胞にヒト抗カルジオリピン-IgMモノクローナル抗体(EY2C9)もしくは、APSの患者血清を反応させた。EY2C9およびAPS患者の自己抗体は、β2GPIのみ形質移入した293Tには結合できなかったが、β2GPIとMHCクラスⅡ分子を共発現させた293T細胞に結合した。このことより、APS患者の自己抗体は、β2GP/MHCクラスⅡ複合体を認識することが初めて明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究目的」のうち、 1. 種々のMHCクラスII分子によるミスフォールドβ2GPIの抗原提示効果を確定する。 2. MHCクラスII分子に提示されたミスフォールドβ2GPI(β2GPI/MHCクラスII複合体)に対する自己抗体(抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体)が、APS患者血清中に存在することを証明する。について、ほぼ予定通りに完了した。 現在、3. 生体組織でβ2GPI/MHCクラスII複合体の局在を解析する。の段階の研究を行っているが、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、「研究目的」のうち、下記の解析研究を継続する予定である。 3. 生体組織でβ2GPI/MHCクラスII複合体の局在を解析する。 4. 定量的に抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体を測定する新規検査法を確立する。実際の臨床上、APSや血清学的陰性APSの診断に対する検査法の有用性を調べる。A. 健常妊婦および健常非妊娠女性の血清中抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体価を測定し、正常基準値を決定する。B. 保存血清を用いて、および前方視的に不育症女性の血清中抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体価を測定し、不育症のリスク・原因検索における検査法の有用性を検討する。 C. 前方視的研究として、妊婦妊娠初期の血清中抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体価を測定し、 産科合併症の発生予知における検査法の有用性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で必要な、β2GPI/MHCクラスII複合体発現細胞の作製に係る培養試薬、同複合体結合ビーズの作成に必要なcDNA作成試薬、トランスフェクション試薬、フローサイトメトリ―の抗体試薬などの消耗品費を使用した。研究は順調に進捗したが、年度前での消耗品購入が予定通りではなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、リアルタイムPCR、フローサイトメトリー、LightCycler™ system、実験・培養室を使用しながら、引き続き研究を順調に推進するために、必要な消耗品を年度早々より購入を開始する。
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