研究課題
ミスフォールドβ2GPIとMHCクラスⅡ複合体がAPSの病態と関連するかを調べた。まず、β2GPIのみを293T細胞に遺伝子導入しても細胞表面にβ2GPI は発現しなかったが、β2GPI とMHCクラスⅡの両方を遺伝子導入するとβ2GPI が細胞表面に発現することを確認した。免疫沈降によって、細胞表面でMHCクラスⅡ分子とβ2GPIが複合体を形成していることを明らかにした。また、C, N末端のそれぞれを標識したβ2GPIとMHCクラスⅡを293T細胞に共発現させることによって、MHCクラスⅡに結合したβ2GPIはペプチドではないことが分かった。次に、ヒト抗カルジオリピン・モノクローナル抗体(EY2C9)と患者血清中の自己抗体がリン脂質非存在下で、APS感受性アレルのMHCクラスⅡ(HLA-DR7)とβ2GPIの複合体を認識することが分かった。APS患者の83.3% (100/120人)において、β2GPI/HLA-DR7-複合体に対する自己抗体が陽性であり、抗カルジオリピン抗体、抗β2GPI 抗体のそれぞれが陰性であるAPS患者の約50%でβ2GPI /HLA-DR7複合体に対する自己抗体が陽性となった。一方、APS患者と健常人の流産絨毛を用いて、proximity ligation assays (PLA)を行った。APS患者の流産絨毛では、脱落膜の血管内皮細胞にMHCクラスⅡとβ2GPIの共発現を認めたが、健常人の流産絨毛では認められなかった。最後に、EY2C9がβ2GPI/HLA-DR7複合体を発現した293T細胞に対して特異的に補体依存性細胞傷害を発揮することを証明した。今回、APSの病態にβ2GPI/MHCクラスⅡ複合体とそれに対する自己抗体が関連していることを明らかにした。また、β2GPI/HLA-DR7複合体に対する自己抗体の検出はAPSの新しい診断法として有用である可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
研究目的のうち、1. 種々のMHCクラスII分子によるミスフォールドβ2GPIの抗原提示効果を確定する。2. MHCクラスII分子に提示されたミスフォールドβ2GPI(β2GPI/MHCクラスII複合体)に対する自己抗体(抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体)が、APS患者血清中に存在することを証明する。3. 生体組織でβ2GPI/MHCクラスII複合体の局在を解析する。について、ほぼ予定通りに完了した。現在、4. 定量的に抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体を測定する新規検査法を確立する。実際の臨床上、APSや血清学的陰性APSの診断に対する検査法の有用性を調べる。の研究を行っているが、順調に進んでいる。
今後、定量的に抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体を測定する新規検査法を確立する。実際の臨床上、APSや血清学的陰性APSの診断に対する検査法の有用性を調べる。A. 健常妊婦および健常非妊娠女性の血清中抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体価を測定し、正常基準値を決定する。B. 保存血清を用いて、および前方視的に不育症女性の血清中抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体価を測定し、不育症のリスク・原因検索における検査法の有用性を検討する。C. 前方視的研究として、妊婦妊娠初期の血清中抗β2GPI/MHCクラスII複合体抗体価を測定し、産科合併症の発生予知における検査法の有用性を検討する
研究は順調に進捗したが消耗品購入が予定通りではなかった。
今後、引き続き研究を順調に推進し、必要な消耗品は年度早々から購入を始める。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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