【目的】視床下部キスペプチンニューロンはHPG axisの最上位に位置し、GnRH分泌を制御しているとされる。しかしながら、GnRH産生ニューロン株GT1-7細胞においてキスペプチンはERK及びcAMP/PKA経路を活性化させるが、GnRH発現を変化させない。今回我々はラット胎児脳神経細胞の初代培養を行い、キスペプチンによるGnRH発現について検討した。【方法】妊娠16-18日ラットの子宮より胎児を取り出し、胎児全脳を採取して初代培養を行った。この初代培養細胞を用い、エストラジオール、キスペプチン(KP-10)、GnRH刺激によるGnRH及びキスペプチンmRNA発現をリアルタイムPCRにて検討した。【結果】ラット胎児脳神経初代培養細胞にGnRH及びキスペプチンが存在する事を免疫染色で確認した。エストラジオールを初代培養細胞に添加すると、キスペプチンmRNA発現は有意に増加した。GnRH mRNA発現はエストラジオールで変化しなかった。脳神経初代培養細胞をKP-10で刺激するとGnRH mRNA発現は約1.5倍に増加した。GnRH発現はGnRH刺激によって1.8倍に増加した。一方KP-10刺激でキスペプチンmRNA発現は約2.2倍に増加し、GnRH刺激で約1.5倍に増加した。KP10のパルス状投与でGT1-7細胞はGnRH発現を増加させ、脳神経初代培養細胞においてもKP10のパルス状投与で静止刺激に比べて強くGnRH発現を促進した。【結語】キスペプチンはGnRH発現を促進するが、キスペプチンをパルス状に投与した方がその効果が強い。今回の結果はGnRH発現はキスペプチン及びGnRH自身により制御されていること、またキスペプチン発現はGnRH及びキスペプチン自身で制御されている可能性を示している。
|