研究課題/領域番号 |
26462493
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松原 圭一 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (80263937)
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研究分担者 |
松原 裕子 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (60403820)
那波 明宏 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90242859)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧症候群 / トロホブラスト / HMGA1 / マウス |
研究実績の概要 |
・サイトトロホブラストは脱落膜内に侵入し,extravillous trophoblastとなると強い浸潤能を獲得し,ラセン動脈のremodelingに関与し,胎盤を形成する。一方,妊娠高血圧症候群では,extravillous trophoblastの浸潤能が低下した結果,ラセン動脈のremodelingが不十分となり,胎盤の形成が不良となる。その結果,子宮胎盤循環が低下し,子宮内胎児発育遅延や高血圧を発症することが知られている。 ・我々はすでに,CD40Lを用いた妊娠高血圧症候群のモデルマウスを作成している。このモデルマウスの胎盤を組織染色すると,脱落膜におけるサイトトロホブラストの浸潤が乏しくなっている。免疫染色では,正常血圧のマウスではサイトトロホブラストの核内だけにHMGA1が発現していたが,妊娠高血圧症候群のモデルマウスではサイトトロホブラストの細胞質にもHMGA1が発現していた。この結果から,核外にHMGA1が移動することによってサイトトロホブラストの浸潤能が低下するのではないかと考えられた。extravillous trophoblastのcell lineであるHTR8/SVneo細胞にHMGA1をtransfectすると細胞の浸潤能は亢進したが,silencingすると低下した。extravillous trophoblastの浸潤能にはHMGA1が重要であることは明らかであるが,さらにデオキシコール酸を投与してHTR8/SVneo細胞の核内HMGA1を核外に移動させると細胞の浸潤能は低下した。 ・extravillous trophoblastの浸潤にはHMGA1の増減と核内外の移動が重要であり,浸潤能の障害が妊娠高血圧症候群の病態形成に関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・妊娠高血圧症候群のモデルマウスにおける組織染色でHMGA1がサイトトロホブラストの核外に発現していること発見できたのは本研究の大きな一歩であった。更に,トロホブラストの核内に存在するHMGA1を核外に移動させることが難問であったが,デオキシコール酸によって移動させることが出来,さらにその結果,細胞の浸潤能が低下した。これらの結果は当初の仮説とは異なっていたが,妊娠高血圧症候群の病態を研究するにあたって非常に重要な結果を得たと考える。
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今後の研究の推進方策 |
・サイトカインやホルモン刺激によるサイトトロホブラスト内のHMGA1の発現と細胞の浸潤・増殖との関連性について検討を行い,HMGA1に対する自己抗体を妊娠マウスに投与することによるphenotypeの変化について検討を行う。
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