研究課題/領域番号 |
26462495
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
三浦 清徳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (00363490)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 産婦人科 / 胎児 / 胎盤 / mRNA / microRNA / 母体血漿 / C19MC / C14MC |
研究実績の概要 |
私どもは、胎盤特異的microRNAは19番染色体(19q13.42)および14番染色体(14q32.31)にクラスター(chromosome 19 microRNA cluster :C19MCおよびchromosome 14 microRNA cluster region:C14MC)を形成して存在しており、胎盤・胎児特異的mRNA/microRNAは、絨毛性疾患、双胎間輸血症候群、異所性妊娠、妊娠高血圧症候群および癒着胎盤の分子マーカーであり、かつ病態を解明する手掛かりになる可能性について報告した(Miura K et al. Placenta 2014A、Miura K et al. Prenat Diag 2014, Miura K et al. Fertility and Sterility 2015, Miura K et al. JOGR in press, Miura K et al. Reprod Sciences in press)。また、それら胎児・胎盤特異的microRNA流入量が、母体BMI、陣痛や胎盤重量などと関連することなど、臨床検査として応用する際に重要な知見を報告した(Morisaki et al. Prenat Diag 2014, Miura K et al. Placenta 2014B, Miura K et al. Prenat Diag 2015)。私どもは、正常絨毛ならびに全胞状奇胎組織を次世代しシークエンス解析し、C19MC領域を含む父親アレルからのみ発現するnon-coding RNAs、C14MC領域を含む母親アレル特異的に発現しているnon-coding RNAsを同定した。すなわち、胎児・胎盤特異的microRNAの発現様式には親特異的にインプリンティングを受けているものが存在し、その異常は切迫流・早産などの原因である可能性があり、その全容解明は異常妊娠・胎盤機能不全に関与するエピゲノム変化について新知見を得ることが期待された。また、母体血漿中における流入量が妊娠時期により変化する胎児・胎盤・羊水由来microRNAのなかに、陣痛と関連するmicroRNAが存在すると期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度は、1)検体集積ならびに2)次世代シークエンス解析による絨毛で親アレル特異的な発現を認めるmicroRNAの同定ならびにH28年度に予定していた3)発症前に採血したcell- free microRNA流入量と産科疾患との関連解析について検討し、新しい知見が生まれた。一方、H26年に予定していた胎児・胎盤特異的microRNAの標的遺伝子(mRNA)を同定する検討はH27年度以降に検討する予定である。研究計画は、全体的に順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、これまでの研究成果を発展させて、胎児・胎盤特異的microRNAの分子機能および標的遺伝子を明らかにし、産科疾患発症リスクの推定および胎児・胎盤機能の分子診断への応用を目指す。目的達成のための期間内の具体的な研究項目を4つ挙げる。1)胎児・胎盤特異的microRNAの標的遺伝子(mRNA)を同定し、トランスクリプトームからみた産科疾患の病態を明らかにする、2)母体血漿中の胎児・胎盤特異的mRNA/microRNA定量化における内部コントロールを決定する、3) 妊娠経過に伴う母体血漿中胎児・胎盤特異的mRNA/microRNA流入量の基準値を決定する、4)将来的な産科疾患発症の推定、胎児・胎盤機能評価に有用な胎児・胎盤由来mRNA/microRNA分子マーカーセットを同定し、臨床応用の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度は、1)検体集積、2)次世代シークエンス解析による絨毛で親アレル特異的な発現を認めるmiRNAの同定ならびにH28年度に予定していた発症前に採血した胎盤特異的miRNA流入量と産科疾患との関連解析について研究をすすめた。一方、H26年度に予定していた胎児・胎盤特異的miRNAの標的遺伝子(mRNA)を同定するために購入を予定していたマイクロアレイチップ、microRNAアンチセンスの作成とその影響を受ける遺伝子発現をモニターしうる実験試薬を購入しなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降は、H26年度に予定していたmicroRNAならびにRNAの発現についてマイクロアレイ解析を行い、さらにはmicroRNAアンチセンスを用いて発現抑制した細胞と抑制無しの細胞について、両者における遺伝子発現を比較して胎児・胎盤特異的microRNAの標的遺伝子(mRNA)を同定する予定である。研究の進行効率を考えて、順調に研究成果を挙げているので、研究期間内に計画通りに研究費は使用される。
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備考 |
長崎大学医学部産婦人科のホームページ
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