研究実績の概要 |
目的:私どもは、平成26年度に、母体血漿中chromosome 19 microRNA cluster (C19MC)領域ならびにC14MC領域のmicroRNA流入量は、産科疾患あるいは異常妊娠と関連していることを報告した。そこで、平成27年度は、当初の計画通り、母体血漿中胎児・胎盤特異的microRNA(C19MCならびにC14MC)流入量の基準値はまだ明らかにするため、妊娠経過に伴うC19MCならびにC14MCmicroRNAの流入量を検討した。 対象と方法:本研究は倫理委員会の承認と妊婦の同意を得て実施された。正常妊婦を対象とし,妊娠11週,23週,30週,36週,産褥1日目および7日目に各々8例ずつ採血した。胎盤特異的microRNAとしてC19MC領域に存在するmiR518b,517a,517cおよび515-3pを,胎児特異的microRNAとしてC14MC領域に存在するmiR654-5p,323-3p,409-3pおよび370をターゲットとし,リアルタイムRT-PCR法で定量した。microRNAの内部コントロールとしてU6 snRNAを用いた。 結果:miR518b/miRu6の妊娠各週および産褥の中央値(最小値-最大値)は0.1446(0.08-0.33),0.2657(0.11-0.54), 0.3849(0.24-2.45), 0.6709(0.24-2.12), 0.2796(0.17-0.60), 0.1446(0.03-0.34)で、有意差を認めた(p<0.01)。その他の胎盤特異的microRNAについても同様の結果で、妊娠経過に伴い上昇し、分娩後低下していた。miR654-5p/miRu6の中央値(最小値-最大値)はそれぞれ0.0291(0.01-0.59),0.539(0.01-0.35),0.0890(0.02-0.37), 0.1245(0.02-0.29), 0.2225(0.01-1.41), 0.819(0.00-0.50)であり、有意差は認めなかった(p=0.558)。その他の胎児特異的microRNAについても同様の結果で、妊娠経過中に変化を認めなかった。 考察:母体血漿中胎児・胎盤特異的microRNAの流入量の推移は染色体領域によって異なることが明らかになり、それぞれの基準値に関する知見が得られた。
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