研究課題/領域番号 |
26462496
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 佳克 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30254288)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 妊婦の高血圧 / 血管内皮機能 / 24h ABPM / 血圧の日内変動 / 発症予防 / サプリメント / 降圧剤 |
研究実績の概要 |
妊婦の高血圧は、妊娠により発生するもの (妊娠高血圧症候群:PIH) と高血圧女性の妊娠がある。PIHは、妊娠高血圧腎症 (PE) と妊娠高血圧 (GH) に分類される。高血圧合併妊婦は、加重型PEや重症高血圧に発展することも多い。PIHのハイリスク妊婦に対して、その予知と高血圧発症予防さらに重症高血圧に対する適切な降圧治療の確立を目的とした。 1. 名古屋市立西部医療センターで妊娠初期から分娩まで管理予定の妊婦で、外来で高血圧(140/90mmHg以上)を呈した妊婦において、PIHハイリスク群として葉酸およびL-アルギニンサプリメントによる予防の検討を行った。24時間自由行動下血圧 (ABPM)、家庭血圧測定 (HBPM)または%FMDにて評価をした。本研究を説明し同意を得て参加登録を行った。PE、GHの発症率、発症週数を各群で検討した。PIH発症ハイリスク妊婦に対するL-アルギニンと葉酸の投与による介入は、血管内皮機能異常を改善し、PEおよび重症GH発症を抑制できる可能性が示唆された。 2. 外来で高血圧 (140/90mmHg以上) を呈した妊婦において、24時間自由行動下血圧 (ABPM) を用い、血圧の日内変動を検討した。Non-dipper/Riser分類、コサイナー解析による血圧の日内変動、さらに新しい日内変動パターン解析を開発し、PE、GHの相違を検討した。血圧の日内変動はPEおよび重症GHにおいて夜間高血圧や日内変動の異常 (日内変動の消失やacrophaseのずれ) が明らかとなった。 3. PIH妊婦の降圧治療の各種降圧剤の使用状況と降圧効果について、インターネットを用いた大規模調査を進めている。各種降圧剤 (ラベタロール、メチルドーパ、徐放性ニフェジピン、その他) による降圧効果と胎児への影響を明らかにする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉酸およびL-アルギニンサプリメントの投与は、ハイリスク妊婦において%FMDを改善し、重症GHやPEの発症予防に有用であると考えられる。 24h ABPMでの血圧の日内変動の解析により、PEおよび重症GHにおける夜間の血圧上昇や日内変動の異常 (日内変動の消失やacrophaseのずれ) が明らかとなった。 降圧剤の降圧効果の調査は進行中である。 また、重症高血圧と脳血管障害の発症に関する検討を行い、子癇発症妊婦と重症高血圧妊婦では、血圧の重症度のみでなく、血圧の変動幅が大きく、血圧の調節能の破綻が存在していることが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
葉酸およびL-アルギニンサプリメントの投与は、例数を重ねる必要があるが、名古屋市立西部医療センターから他院での検討を進める予定である。 PEおよび重症GHでの24h ABPMの特性変化の検討を進め、その特性より降圧剤投与時間の設定の指標とするとともに、降圧剤投与の効果判定の検討を進める。 PIHの降圧治療は数施設によるpilot studyを走らせている。大規模調査として登録医師の医療機関を拡大する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度にて症例数が予定よりやや少なかったこともあり、検査料が想定していた金額に達しなかった。その主な理由は、研究者の所属施設の変更が予定されているため、登録を中断したことによる。また、当初予定していた国際学会への参加を中止したため、旅費の使用額が予定より少なかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度にインターネットを用いた登録システム利用料としての使用を予定している。また、次年度より、新たな施設において症例数を増加し、検査料として用いていく。
|