研究課題
妊娠高血圧症候(PIH)妊婦において24時間自由行動下血圧(24h ABPM)を測定し、妊娠高血圧腎症(PE)は夜間血圧上昇が多く認められることを明らかにした。家庭血圧測定 (HBPM) を夜間血圧測定機能付き血圧計による血圧測定(HBPM+N)を用いて、PIH発症から産後半年にわたり血圧測定を行った。産後3月で血圧は正常化したが、夜間血圧が高値を示すものがみられた。新しく認可された経口薬ラベタロールの使用効果について検討した。インターネット登録により複数の施設から患者登録を行った。ラベタロールは、メチルドーパより降圧率が高く、頭痛等の副作用も少なかった。同じく最近使用が認められた徐放性ニカルジピンは、降圧効果はラベタロールより高かったが、使用の頻度は低かった。ニカルジピン注射は緊急時の確実な降圧を目的として用いられ、有効であった。1日以上の投与が望ましく、また、投与終了後に20%近くにリバオウンド現象(収縮期血圧160mmHg以上の上昇)を認めた。PIHハイリスク妊婦における血管内皮機能低下例を対象とした葉酸+L-アルギンサプリメントの研究では、40才以上、BMI>27、高血圧合併症のある妊婦や前回PIH、初診時の血圧が高いものなどをPIH発症ハイリスク妊婦として、名古屋市立西部医療センターで妊娠初期から分娩まで管理予定の妊婦で、同意を得て行なった。上腕動脈のflow-mediated vasodilatation(%FMD)低値(110以下)を血管内皮機能低下群として、葉酸0.4mg+L-アルギニン1g/日(内服群)を投与した。内服を希望されなかった妊婦をコントロール群とした。投与開始前、開始後に%FMD測定した。内服群では、妊娠高血圧腎症(PE)の予防効果があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
診察室外血圧測定による妊婦の高血圧の研究は、その特性変化が明らかになり、順調である。降圧治療については、複数施設による降圧薬の有用性が明らかになった。また、注射薬としてカルシウム拮抗薬使用の有用性と使用の実際を明らかにした。血管内皮機能を用いた妊婦の高血圧発症予防は、あまり進展がみられなかった。
診察室外血圧測定による妊婦の高血圧の特性変化から特に夜間高血圧に着目して研究を進めてゆく。具体的には、24時間血圧測定に加えて、夜間血圧測定機能付き血圧計による夜間血圧の変動の観察を通じて、病態の変化、治療効果を半手してゆく予定である。また、妊娠終了後の一定期間(3月から6月)における血圧の変動の観察により、将来の高血圧の予知予防への研究に発展させる予定である。血管内皮機能を用いた妊婦の高血圧発症予防は、家庭血圧や新しい内皮機能検査を用いて評価する予定である。
今年度は、研究者の所属施設変更に伴い、症例の登録を中断したため、症例数が予定より少なめであり、検査料が予定金額に達しなかった。また、予定していた国際学会への参加を中止したため、旅費の使用額が少なかった。
次年度に夜間血圧測定機能付き血圧計を用いた夜間血圧変動の研究を進めていく予定であり、血圧計購入およびデータ通信料としての使用を予定している。
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