研究課題/領域番号 |
26462496
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 佳克 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (30254288)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 妊婦の高血圧 / 血管内皮機能 / 産科ストレス / uncoupling / 診察室外血圧 / 降圧治療 / 発症予防 |
研究実績の概要 |
妊娠高血圧症候群(HDP)妊婦において24時間自由行動下血圧測定(24h ABPM)と夜間血圧測定夜間血圧測定機能付き血圧計による血圧測定(HBPM+N)を行い、妊娠高血圧腎症(PE)は夜間血圧上昇が多く認められることと、日内変動の異常を明らかにした。産後に血圧測定を継続し、産後3月で多くの血圧は正常化したが、一部に夜間血圧が高値を示すものがみられた。妊娠高血圧(GH)では、産後も高血圧が持続するものが多く、女性の将来の高血圧の予防に向けての介入が必要であることが示唆された。 PEの血管内皮異常、とくに一酸化窒素(NO)に関する病態形成の研究を行った。O2-のマーカーである8OHdGは、PE妊婦血管組織中に高く、血清レベルでは低かった。NOのセカンドメッセンジャーであるcGMPは血清レベルで低下し、O2-とNOが反応したperoxynitriteの指標であるnitrotyrosineは血管組織中で高いことが明らかとなった。これらの結果は、PEにみられる血管内皮NOの異常にO2-(おそらくuncoupling反応による産生増加)とperoxynitriteが関与することが明らかとなった。これまでの2step theoryに続くsecond stageの病態の存在(2 stage theory)が病態の形成に必要であることが示唆された。 PEの発症予防としてuncoupling反応- O2-産生抑制のためのL-アルギニン+葉酸投与を行ってきたが、2 stage theoryはこの結果を支持した。 ニカルジピン注射は緊急時の降圧に用いられ、有効であった。しかし、投与終了後に20%近くにリバウンド現象(収縮期血圧160mmHg以上の上昇)を認めた。分娩時高血圧の対応にニカルジピン注射を用いその有用性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
診察室外血圧測定による妊婦の高血圧の研究は、その特性変化が明らかになり、順調である。診察室外血圧測定について明らかになった夜間血圧上昇や日内変動の異常に、uncoupling-peroxynitriteを中心とした病態がどのように関わって、病態が形成されるかの研究を進めている。その成果をPE妊婦の発症予防のみでなく、治療への応用を探ってゆく。 また、産後の血圧遺残がGHで多く認められたことより、HDP妊婦の産後管理の重要性が明らかとなり、いわゆるGHハイリスク妊婦(BMI、年齢、高血圧やHDP既往、家族の高血圧など)を中心に、生活習慣の改善(減塩)や降圧剤の投与基準の検討を行ってゆく。降圧治療については、複数施設による降圧薬の有用性が明らかになった。また、注射薬としてカルシウム拮抗薬使用の有用性と使用の実際を明らかにした。HDPガイドライン作成に向けてその有用性と問題点をさらに明らかにしてゆく。
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今後の研究の推進方策 |
診察室外血圧測定により得られた妊婦の高血圧の特性変化、特に夜間高血圧と日内変動の異常と血管内皮NO異常の関連に着目して研究を進め、その結果をもとに、HDP患者の予防、治療に加えて将来の高血圧などの生活習慣病発症予防に対してその管理が重要であることのへの提言を行ってゆく。HDP動物モデルを用いて、その病態研究と治療の開発の研究を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年に所属施設を移転した。それに伴い症例の登録や検査が一時中断された。現在、症例登録は順調に進められているが、登録数が予定数に達せず、研究期間の延長が必要となった。また、病態研究とその予防に関して、研究を再開し、成果が出てきている。この点においても研究期間の延長を必要とした。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、1.HBPM+Nを用いた夜間高血圧と日内変動の異常の産後の長期観察、2.血管内皮NO異常の研究と夜間高血圧と日内変動の異常の関連の研究を進める。
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