研究課題/領域番号 |
26462498
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 寛正 自治医科大学, 医学部, 講師 (90406116)
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研究分担者 |
大口 昭英 自治医科大学, 医学部, 教授 (10306136)
白砂 孔明 東京農業大学, 農学部, 助教 (20552780)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧症候群 / インフラマソーム / 炎症 |
研究実績の概要 |
本研究では、胎盤由来の危険シグナル(cell free DNAや細胞破片)により、インフラマソームなどの炎症機構が過剰に惹起されることで胎盤炎症が誘発され、妊娠高血圧腎症が発症するのではないかという仮説を立てた。本解析ではヒトSTOX1遺伝子導入マウスを用いる。このマウスは、重度の妊娠高血圧腎症病態を発症するヒトの本病態に類似した新規の動物モデルである。研究全般の具体的な計画内容は、①ヒト病態血清による炎症活性化機序を解明する、②本病態に関連し得る因子およびヒト胎盤細胞株を使用し、炎症惹起機序を検討する、③STOX1妊娠高血圧腎症モデルを用いた炎症応答活性化・炎症性細胞動態の同定をすることである。 ①正常妊婦、妊娠高血圧腎症の病態発症の妊婦の血清を胎盤細胞に添加すると、病態発症血清添加により炎症性サイトカイン産生が増加し、細胞死が誘導された。正常妊婦血清と比較して、病態血清中には核由来およびミトコンドリア由来のcell free DNAが多く存在していた。血清から抽出したcell free DNAを胎盤細胞に添加すると炎症応答が惹起され、また血清にDNA除去剤を処理した後に胎盤細胞に添加すると炎症応答が抑制されたことから、血清中のcell free DNAが胎盤細胞における炎症応答を惹起する要因の1つでることが分かった。②レンチウイルスを用いてヒトSTOX1過剰発現細胞を作製し、炎症応答を検討した。STOX1を過剰発現させても、胎盤細胞から分泌される妊娠高血圧症候群原因因子(sFlt1およびsEng)の分泌に変化は見られなかった。また、炎症を惹起させるためにLPSを添加すると、通常の胎盤細胞と比較して、STOX1過剰発現胎盤細胞で炎症関連遺伝子発現の高い増加率が見られたが、それらの分泌には影響は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主実験はモデルマウスを用いた病態機序の解明である。今年度の研究により、STOX1遺伝子をホモで有する個体の作製が完了し、STOX1過剰発現オス個体と野生型メス個体を交配させる実験を開始することが可能になった。次年度では、このモデルマウスを用いて妊娠高血圧症候群病態発症のメカニズム解明に迫る。ヒト胎盤細胞および胎盤組織を使用した培養実験は順調に進んでおり、様々な炎症誘導関連因子の影響に関して分子生物学的手法を用いて解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
妊娠高血圧症候群病態血清を胎盤細胞に添加することで炎症が惹起されることが分かった。また、ヒト胎盤細胞および胎盤組織を使用して、様々な炎症誘導関連因子(AGE, HMGB1, S100Aなど)が胎盤の炎症応答機構を制御することを明らかにしつつある。今後は、病態血清や炎症関連因子を添加することでなぜ炎症が惹起されるのか、どのような機序で炎症が起きるのかを明らかにするだけではなく、薬剤などを用いて炎症を抑制できる可能性を探る。また、生体を用いた妊娠高血圧腎症の機序を解明するため、STOX1遺伝子導入マウスの解析実験を進める。このマウスを用いて炎症活性化や免疫細胞動態などの解析実験を開始する。
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