研究課題
本研究では、胎盤由来の危険シグナル(cell free DNAや細胞破片)により、インフラマソームなどの炎症機構が過剰に惹起されることで胎盤炎症が誘発され、妊娠高血圧腎症が発症するのではないかという仮説を立てた。本解析ではヒトSTOX1遺伝子導入マウスを用いる。このマウスは、重度の妊娠高血圧腎症病態を発症するヒトの本病態に類似した新規の動物モデルである。研究全般の具体的な計画内容は、ヒト病態血清による炎症活性化機序を解明する、本病態に関連し得る因子およびヒト胎盤細胞株を使用し、炎症惹起機序を検討する、STOX1妊娠高血圧腎症モデルを用いた炎症応答活性化・炎症性細胞動態の同定をすることである。正常妊婦、妊娠高血圧腎症の病態発症の妊婦の血清を胎盤細胞に添加すると、病態発症血清添加により炎症性サイトカイン産生が増加し、細胞死が誘導された。正常妊婦血清と比較して、病態血清中には核由来およびミトコンドリア由来のcell free DNAが多く存在していた。血清から抽出したcell free DNAを胎盤細胞に添加すると炎症応答が惹起され、また血清にDNA除去剤を処理した後に胎盤細胞に添加すると炎症応答が抑制されたことから、血清中のcell free DNAが胎盤細胞における炎症応答を惹起する要因の1つでることが分かった。ヒト胎盤組織を培養すると、培養液中にcell free DNAが多く放出された。また、妊娠高血圧腎症患者の胎盤組織からは正常妊婦胎盤組織よりも多くのcell free DNAが放出された。病態発症血清を添加すると、細胞外DNAを認識する機構としてしられるToll like receptor 9 (TLR9)の遺伝子およびタンパク質発現が増加し、DNA除去剤を同時に添加することでその応答は抑制された。
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