研究課題
「卵子幹細胞」(oogonial stem cells: OSCs)に関するTillyらの報告(White YA, et al. Nat Med, 2012)に対しては、複数の懐疑的な論評や反証が呈示される一方、体外受精時に得られた卵巣組織から同様の細胞が得られたとの報告(Ding X et al. Sci Rep, 2016)がTillyらとは別個になされ、議論は現在も続いている。我々はTillyらにより改善されたプロトコル(Navaroli DM et al. Methods Mol Biol, 2016)を導入することにより、従来法よりも細胞抽出効率を改善することができた。これまでの展望と今後の展望に関して、Tillyらから研究データの提供を受け、『卵巣内の「幹細胞」をめぐる現状』として教育講演を行った(業績参照)。この中で、卵子活性化研究に用いられている「卵子幹細胞(EggPCs)」の特性は上述したOSCsと同様とされるが、具体的な情報の多くは開示されないまま臨床応用されていることが懸念されること、EggPCsを用いた卵子活性化の適応となるのは、『比較的多数の卵子が得られる、染色体異常に起因しない反復ART不成功例』という極めて限定的な症例であること、OSCsのユニークな特性や、生殖医療や妊孕性温存(卵巣凍結など)への応用の可能性も考えると、今後の発展が期待される領域でもあることなどを報告した。また、本研究で得られた知見を実臨床に応用するため、若年悪性腫瘍患者の卵巣凍結保存を開始し、埼玉県内の患者の妊孕性温存を目的とした「埼玉県がん・生殖医療ネットワーク(SORNET)」を設立した。さらに、わが国の若年悪性腫瘍患者に対する妊孕性温存体制を整備・拡張するための情報発信を行い(業績参照)、産科婦人科学会、日本癌治療学会の妊孕性温存に関するガイドライン作成に参画した。
3: やや遅れている
ヒト卵巣組織からDDX4陽性細胞を抽出する方法を最適化するとともに、継代培養後に、得られた細胞のPRDM1、DPPA3、IFITM3などの生殖細胞特異的遺伝子やUFT1、NANOG、SOX2などの多能性細胞特異的遺伝子の発現プロファイルを比較検討している段階である。
性同一性障害患者より提供された卵巣組織から分離・抽出された卵子幹細胞(oogonial stem cells: OSCs)の細胞学的特徴の解析を進める。2016年9月より、Tillyらの研究室に我々の教室員を派遣しており、共同研究体制を更に強化している。特に、マウスOSCsでは減数分裂に関わるStra8が継代培養の過程で発現することや始原生殖細胞の誘導因子であるBMP4によってStra8が誘導されることなどが報告されているため、ヒトOSCsにおけるSTRA8発現の有無やBMP4などのサイトカインの作用を解析する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件、 招待講演 9件)
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