研究課題
[背景と目的]遺伝子解析技術の進歩に伴い、多くの民族・人種において2型糖尿病(Type 2 diabetes mellitus: T2DM)および妊娠糖尿病(Gestational diabetes mellitus: GDM)関連候補遺伝子の探索が行われている。日本人においもT2DM関連候補遺伝子が同定されてきたが、GDM関連候補遺伝子は未だ検討されていない。本研究の目的は日本人GDM感受性候補遺伝因子を抽出することである。[方法]研究対象は、GDM合併妊婦群および正常耐糖能妊婦(normal glucose tolerance: NGT)である。母体末梢血から抽出したDNAを用い、既報のT2DMもしくはGDM関連遺伝子(36遺伝子:45一塩基多型[ SNP])とGDM発症との関連解析を行った。[結果]収集症例のうちGDM群171名、NGT群128名 を解析対象とした。45 SNPのうち、NGT群に比べGDM群はrs266729(ADIPOQ: odds ratio [OR]: 1.56)、rs10811661(CDKN2A/2B: OR: 1.46)、rs9505118(SSR1-RREB1: OR: 1.41)についてリスクアレルを有する傾向にあった。また、3 SNPを用いて複合解析を行うと、GDM群はNGT群と比較して有意に多くのリスクアレルを有し、5個以上のリスクアレル保有群は1個以下保有群と比較してGDM発症リスクが有意に高値であった(OR 7.3)。[考察]本研究では日本人GDM発症にAIPOQ、CDKN2A/2BおよびSSR1-RREB1が関与している可能性が示された。今回抽出されたCDKN2A/2BおよびSSR1-RREB1はともにインスリン分泌関連遺伝子である。本研究により、インスリン分泌不全がGDM発症に深く関与することが遺伝学的にも示唆された。
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Endocr J
巻: 64 ページ: 463-475
10.1507/endocrj.EJ16-0431