研究課題/領域番号 |
26462501
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
関沢 明彦 昭和大学, 医学部, 教授 (10245839)
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研究分担者 |
小出 馨子 昭和大学, 医学部, 助教 (90384437)
四元 淳子 昭和大学, 医学部, 特別研究生 (30553648)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 初期絨毛 / DNAメチル化 / 喫煙 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
目的:母体喫煙を含めた子宮を取り巻く環境因子は胎児および胎盤におけるエピジェネティクスな変化を引き起こすと考えられ、遺伝子発現を変化させ、胎盤形成にも影響を与える可能性がある。我々の研究は、妊娠初期の母体喫煙が妊娠初期の絨毛に与える影響をエピジェネティクスの観点から解明することを目標としている。 方法:妊娠7-8週に妊娠中断を希望する女性より、倫理委員会の承認のもと文書での同意を得て妊娠中断時に絨毛組織と母体血清を採取した。絨毛組織よりgenomic DNAを抽出し、Human methylation 450Kアレイによりメチル化の網羅的解析を行った。メチル化の解析はIllumina Methylation AnalyzerとSmirnov-Grubbs' outlier testを用いた。 また喫煙の状態を定量的に評価するため血清コチニン値により非喫煙者と喫煙者を分類した。 結果:喫煙者11名と非喫煙者11名を対象に検討を行った。各CpG領域におけるWilcoxon rank-sum testを用いた2群間の比較では有意なメチル化変化は同定されなかった(Benjamini-Hochberg adjusted p-value of 0.05)。Outlierによるアプローチで、喫煙者は非喫煙者に比較してoutlierの数は多く、低メチル化outlierも多かった。同時に喫煙者における低メチル化outlierは遺伝子のプロモーター領域において非喫煙者に比較して多かった。 結論:本研究では妊娠初期の母体喫煙が絨毛のDNAのメチル化は、特異的なCpG領域の異常を引き起こすよりも、転写開始点周囲のプロモーター領域でメチル化異常を起こしやすいことが示された。母体の喫煙は妊娠初期の絨毛においても既にエピジェネティクスに修飾されており、これらの積み重ねが胎児及び胎盤の発達に影響を及ぼしていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
喫煙に伴う妊娠初期の絨毛機能の変化についての研究において、喫煙妊婦の検体採取でやや目標数の確保に苦戦しているもののおおむね目的とする遺伝子解析はできている。今後、抽出した領域のDNAメチル化解析における検体数に問題が出てくる可能性があるものの、現状の計画は達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度にアレイ解析によって抽出されたDNAメチル化について個々の領域の変化の意味を多数例で検討することで、喫煙の影響の具体的な病態を解明していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体採取が予定に比べて遅れているため、試薬購入の予算の執行ができなかった。平成28年度の前半には検体は揃う予定であり、順次解析を進めていく予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年6月には喫煙者の初期絨毛の検体採取が終了する予定である。 終了後にエピゲノム変化をアレイ解析で網羅的に解析できる予定であり、その結果を受けて、平成28年度の検討が開始される予定である。
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